TOP Problem&Polemic:課題と争点 市場・国家・資本主義─東京新聞『本音のコラム』から PP選書

市場・国家・資本主義─東京新聞『本音のコラム』から PP選書

  • 竹田茂夫
  • 価格 2000+税円
  • 判型:46判、252ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0674-8
  • 初版発行年月 2018年1月25日
  • 発売日 2018年1月27日

内容紹介文

神の見えざる手:invisible hand of God は、いずこへ
?制御できない市場原理と資本主義を解読する!
ディープな眼差しで社会事象を縦横無尽に照射する!
凝縮した緻密な表現で活写する!
五百数十の限られた字数に礫を込める!
コラムニストの本音のコラムが噴射する!

経済力において世界経済の覇者アメリカを凌ぐ中国は、5000年の文明史をもち、オリエントからヨーロッパにかけて当時の近代的な文明をもたらした深淵な文化を背後にもつ膨大な国家である。だが、16世紀?19世紀にかけて資本主義がイギリスから発生して世界市場を編成し、ヨーロッパからアメリカ、そしてアジアの辺境に位置する日本までもその市場圏に包摂して進展していったのに対して、中国は逆に日米欧の列強諸国の植民地として簒奪されたままで、資本主義化することなく社会主義化によって広大な国土と国民を掌握する方法以外に選択の余地がなかった。その社会主義もソ連邦が1990年ベルリンの壁の崩壊と前後して消失してしまった。
だが中国は、1970年代末の鄧小平による「改革開放」政策による市場経済化によって、発展途上国から一躍アメリカを凌ぐ経済大国に変貌した。もはや世界の政治・経済は中国を抜きにして考えることができないくらいその影響力は甚大なものになった。
市場経済化はかくも短期間のうちに貧困というグローバルな問題を解決できるのか? 市場経済化の後に必ず1%の富裕層のための資本主義化が始まる? 資本主義の下で奴隷労働に近い強圧的な労働を強いられる? さらに、教育格差から始まって所得格差、正規・非正規の処遇格差という生存権の格差を強いられる? 臓器移植の臓器は売買の対象とすべきないという理由はあるのか? 代理出産の母親に対する報酬は所得なのか? 
経済学はこのような問いに答えるべき学問と思われるかもしれない。だが、現代経済学は市場イメージの混乱を拡大する。個々の研究には多くの優れたものがあるが、経済学を学んでも市場の統一的な像は浮かんでこない。世界経済や文明史へ視点を広げてみても、市場のイメージは収束しない。
現代の日本を見ても、所得や資産や教育機会の格差や、不安定な非正規雇用などは制御されない市場原理のもたらしたものと理解されている。現代経済学は、市場は「神の見えざる手」を通して人々の利己的欲望を縫い合わせて社会的調和を実現する、という「資源配分の効率性」として再定義して教義の中心に据える。
さらに経済学は所得分配の問題を経済学の守備範囲から除外した上で、実際の市場のアノマリー(Anomaly:説明できない事象)を「市場の失敗」と名付けて個別の政策的課題へ格下げしてしまう。その結果、根本的な思考や洞察は滑り落ちてしまう。
私は現代経済学に足りないものは十分に明確になっていると考えている。権力と構造と歴史感覚である。われわれが日々、非正規雇用や職場の階層秩序で経験しているように、市場交換とは相互利益のための自発的行為であると同時にミクロ権力の行使の場であり、市場交換の幾重にも重なった構造が「神の見えざる手」の機能を果たす場合もあれば、逆に「意図せざる巨大な暴力」として作用する場合もある。歴史は、市場や国家にまつわる多くの「見えざる手」と「巨大な暴力」の実例を提供している。

著者略歴
竹田茂夫(たけだ・しげお)
1949年、東京生まれ。
一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。
ニューヨーク州立大学Ph.D.
現在、法政大学経済学部教授。専攻は理論経済学。
著書に、『現代資本主義とセイフティ・ネット』(共著・法政大学出版局)、『信用と信頼の経済学――金融システムをどう変えるか』(NHKブックス)、『思想としての経済学――市場主義批判』(青土社)などがある。

目次

? 市場
市場原理と資本主義 ─ 18
?市場原理 18/?革新の裏側 19/?構造的暴力 20/?市場の限界 21/?周回遅れの市場主義 22
?チープ・シックの裏側 23/?「労働は商品ではない」24/?知と経済権力 25/?金融危機の教訓 26
?市場神話と価格操作 27/?企業・消費複合体 28/?近代工業の栄光と悲惨 29
?グローバルな臓器市場 30/?奴隷制 31/?暴力と資本主義 32/?製薬業界の裏側 33
?内なる資本主義 34/?生殖医療と商品化 35/?市場原理と連帯原理 36/?資本主義の夢 39
?露出の欲望 40/?空想的資本主義 41/?時間と情報の市場化 43/?リチウム電池の裏側 44/?道具的理性 45

企業 ─ 47
?会社の身体 47/?企業の失敗 48/?私企業の公共性 49/?ユニクロ・ストーリー 51
?創業者の野望と責任 52/?原発と東芝の闇 53/?企業のミクロ権力 54/?企業家の実像 55
?市場のファシズム 56/?東芝凋落の本質 57/?理念と狡智 58

経済学 ─ 60
?経済学の(不)効用 60/?経済学の作法 61/?理論家の責任 62/?ロビンソンと経済学 63
?大転換と大分岐 64/?ナッシュ氏の悲劇 65/?現代のアダム・スミス 67/?理論とイデオロギー 68
?市場原理主義に抗して 70/?ビッグデータの驕り 71/?行動経済学 73

はじめに─市場のイメージ 5

? 国家・戦争・ファシズム
国家と国境 ─ 76
?ベルリンの壁 76/?国家機密とプライバシー 77/?国策と想像の共同体 78/?琉球ナショナリズム 79

?国家の原罪 80
/?安保法制と例外状態 81/?国家と難民 82/?国家の虚構 82
?選挙とアベノミクス 83/?ボディ・ポリティック 85/?国境という呪縛 87/?権力のオーラ 88

戦争 ─ 90
?国防民営化の悪夢 90/?アンノウン・アンノウン 92/?ブレア元首相の戦争犯罪 94

?組織としての日本軍 95/?狂気と悪の政治的利用法 95/?空からの監視と懲罰 96
?憲法九条の普遍的価値 97/?なぜ核兵器は特別か 98/?殺戮の遠近法 100

?基地国家と従属国家 101/?戦争の科学技術 102/?ナパーム 102/?キューバ危機の教訓 103
?奇襲と報復 105/?感情移入 106/?兵営国家のトラウマ 107

ファシズム ─ 108
?命と暮らし 108/?深部の憎悪と暴力 109/?模倣と権力 110/?ハンナ・アーレントの教訓 111

?分断と知のグーグル化 112/?流言飛語 113

深層国家 ─ 115

?米国の影の政府 115/?見えざる深層国家 117/?再編される深層国家 118

? 新自由主義
新自由主義の理念と現実 ─ 122
?ネオリベラル・ターン? 122/?レーガンの遺産 123/?ランド・ラッシュ 124/?チリの九・一一 126
?評判と市場経済 127/?最低賃金制 128/?究極の戦略特区 129/?民営化と現場の荒廃 130

?ウォール街リベラル 131/?ネオリベの後に 132/?ツアーバス事故 134/?監獄株式会社 135

?モノ・カネ・ヒトの次 136

欧州の実験 ─ 137

欧州共同体
?ドイツの労働市場改革 137/?連帯か、懲罰か? 138/?欧州激変 139

英国労働党

?英国労働党 140/?英国労働党の可能性 141/?規制緩和の反転へ 142/?ネオリベ清算の分岐点 143

日本の政策 ─ 145

アベノミクス
?歪んだポリシー・ミックス 145/?戦略特区と例外権力 146/

?アベノミクスの帰結 147
?安倍政権、終わりの始まり 148/?知と権力の慢心 149/?岩盤規制という幻想 150

黒田日銀
?インフレ目標 152/?インフレ期待 153/?遂行的矛盾 153/?ヘリコプター・マネー 154

?日銀の失敗と成長戦略 155

TPP・自由貿易
?オバマの事情 157/?TPP秘密交渉 158/?自由貿易帝国主義 158/?米国通商代表部 159

?反TPP、米国版 160/?TPPが開く新世紀? 161/?統一ルールの虚妄 163

?ISDSと訴訟資本 164/?市民社会と日欧EPA 165

格差と福祉 ─ 167
?格差と寿命 167/?障害者の尊厳 168/?ブロッコリーと医療保険 169/?医療民営化 170

?権利としての医療 171/?人の命と薬の特許 172/?貧困のアメリカ 173/?改革幻想 174

?貧困と市場の公準 175/?魔の山 176/?なぜ弱者を憎むのか 177

? 環境
原発 ─ 180
?分岐点 180/?原子力ルネサンス 181/?原発、国家、市民 182/?リクヴィダートル 183

?脱原発、ドイツ流 184/?核廃棄物輸出 185/?確率論的安全評価 187
?飯舘村 187/?感情的反原発? 188/?原発の製造物責任 189/?不可逆的 190 
?上関原発 191/?失敗の本質 192/?原発労働 192/?脱原発・脱化石燃料 193 ?システム破綻の刑事責任
194/?具体的危険性 196/?最悪シナリオ 197/?高度の注意義務 198

?ドイツの反原発運動 199/?日印原子力協定 200/?米国版原子力ムラ 201

?経験則と社会通念 202/?深い崩壊感覚 203/?ふるさと喪失慰謝料 205

?反原発労働運動 206/?経産省構想 207/?核と政治的正統性 207

公害と農業 ─209
?水俣病特措法 209/?大規模農業のコスト 210/?遺伝子組換え技術の罠 211
?ボパール後の世界 211/?排出権取引 212/?予防原則 213/?農業と市場原理 214

?緩慢な暴力 215/?グローバル企業と環境汚染 216/?水俣病と社会の基底 218

?労災から公害へ 219/?公害の政治学 220

? 歴史と経験
記憶と記録 ─222

?歴史と経験 222/?歴史の記憶装置 223/?歴史の天使 224/?語られぬ体験225

?歴史の謝罪 226/?犯行の再演と追体験 227/?陳腐でラディカルな悪 228

?ドイツの母親 229

労働・雇用・生活 ─231

?同意の生産 231/?顔の見える労使関係 232/?移民と棄民 233/?就業力のトリック 234

?職場統治 235/?下請労働報告書

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