TOP [雑誌]精神医療 相模原事件が私たちに問うもの[MHL38]メンタルヘルス・ライブラリー

相模原事件が私たちに問うもの[MHL38]メンタルヘルス・ライブラリー

  • 太田順一郎+中島 直編
  • 価格 1800+税円
  • 判型:A5判、176ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0673-1
  • 初版発行年月 2018年2月25日
  • 発売日 2018年2月27日

内容紹介文

はじめに

太田順一郎

2016年7月26日、神奈川県相模原市の障害者支援施設において殺傷事件が発生した。「相模原事件が私たちに問うもの」を特集テーマとした精神医療誌86号が発行されたのが2017年4月であり、すでに事件発生から9か月近くが経過していた。同号を単行本化した本書のために、新しく一部の論考を書き下ろしている現時点で事件は1年3か月前の出来事となっている。
事件後1年に当たる2017年7月前後には「事件後1年」といった報道が一時的に増えたが、その時期を過ぎると、この事件に関連した報道がメディアで取り上げられることもずいぶん少なくなった。しかし、この1年3か月の間、この事件は私たち精神医療関係者の頭から離れなかったと思う。
事件が発生した直後、私たちはこの事件の悲惨さに大きな衝撃を受けた。
46人が襲われ傷を負わされたということ、そのうち19人が命を奪われたということ、そして彼らはおそらくほとんど抵抗らしい抵抗をすることもなく殺されてしまったのだろうということ。悲惨な出来事に対して鈍感になってしまっている私にさえ、重苦しいものを飲み込んでいるような強い身体的反応が起きたことを覚えている。
続く報道により私たちは、この事件の被疑者が事件前に衆議院議長に宛てて書いたという手紙の内容を知り、事件前の被疑者の言動の一部も知るようになる。そこに顕れている被疑者の障害者に対する激しい差別意識を、その障害者施設で働いている間に被疑者が次第に抱くようになったこと、その差別意識が被疑者の思考の中では、施設収容者の大量殺害と容易に結びついてしまったこと、そして被疑者は自分が犯そうとしている恐るべき犯罪行為が、国家によって容認され、国家によって自分が許されるだろうと(本気で?)考えていたらしいことを知るようになる。それは非常に恐ろしいことであると同時に、とても奇妙なことに感じられた。被疑者の手紙に書かれていることの一部は荒唐無稽で、失われた19の命との対比には、読んでいる私たちの方が現実感を失ってしまいそうになる。
その後精神科医としての私にとってこの事件は、一方でナチスドイツのT4作戦によって20万人の障害者が殺されたときのドイツの精神科医たちが果たした役割を思い出させ続けるものとして、また一方で自分が日々関わっている現実の精神科医療に非常に直接的な影響を及ぼすものとして頭から離れなくなってしまった。政府は事件後厚生労働省を中心に、「相模原
市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」を立ち上げて、この事件の「検証」と「検討」を行うことにしたのだが、このチームが事件の4か月半後に公表した最終報告書はそのまま法律の改正に組み込まれていくことになった。
わが国の精神科医療のあり方は、法制度の側面から言えば精神保健福祉法という法律によって規定される部分が最も大きい。精神保健福祉法は前回は平成25年に改正されて翌26年に改正法が施行され、3年後の平成29年頃の次回改正が予定されていた。この次回の法改正をにらんで政府は平成28年1月に「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」を立
ち上げ、そこにおける議論を平成29年度に予定されている精神保健福祉法の改正と、その翌年度平成30年度に予定されている医療計画、介護計画、障害福祉計画の見直し、そして診療報酬改定などに反映させるというスケジュールが予定されていた。この検討会が始まった平成28年1月の時点では、おそらく今回の精神保健福祉法改正は医療保護入院の決定におい
て、3年前に保護者制度を廃止して家族等同意を始めて以降なぜか使いづらくなってしまった市町村長同意を、あらためて使いやすいものにするような制度修正を加える以外は、それほど大きな変更は行われないのではないか、とも考えられていた(そう考えていたのは私だけかもしれないが)。
ところが、平成29年の精神保健福祉法改正は、この検討会発足後に起きたこの悲惨な事件と、その前年に起きていた精神保健指定医資格の不正取得に対する対応の必要性、という2つの事項によって予想とはやや異なった方向に進み始めることになった。平成29年2月中旬に政府が示した精神保健福祉法改正の素案には、当初予定されていなかった措置入院制度に
関する大幅な変更と指定医取得に関する修正・変更が書き込まれることとなったのである。前者はもちろんこの相模原事件の影響であり、相模原事件の被疑者が事件を起こす5か月前に精神科病棟に約2週間措置入院という入院形態による入院を行っていたという事実によって引き起こされた事態である。被疑者が措置入院をしていたという事実に基づいて、「相模原市
の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」は平成28年12月、このような犯罪を防ぐために措置入院後のフォローアップ体制を強化するための法改正を提言する報告書を公表し、これを受けて「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」は翌平成29年2月に措置入院制度の改正についてはほぼ同様の改正を求める報告書を提出し
た。そして、これら一連の報告書の内容を反映した精神保健法改正素案がその直後に公表されることになったのである。
改正法の素案を提示するに当たって、政府は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の概要」を示し、その中で今回の法改正について「改正の主旨」を以下のように記した。「相模原市の障害者支援施設の事件では、犯罪予告通り実施され、多くの被害者を出す惨事となった。二度と同様の事件が発生しないよう、以下のポイントに留意して法整備を行う」。ここでは、今回の法改正の主眼目が保安であり、犯罪の防止であることが明言されている。不思議なのは、この一文に続くのが「医療の役割を明確にすること─医療の役割は、治療、健康維持推進を図るもので、犯罪防止は直接的にはその役割ではない。」という文章であることであった。この2つの文章が続いて登場することの滑稽さを、この「概要」の作成者は分かっていないのかもしれないし、その滑稽さを十分に理解した上でこのように述べているのかもしれないと思われた。
その後平成29年4月? 5月の50日間、参議院厚生労働委員会において行われた審議の中でこの一文は非常に強い批判を受け、厚生労働省は上記「法律案の概要」からこの一文を削除するという異例の措置を取らざるを得なくなるのであるが。
これまでわが国では、いやわが国だけでなく多くの国で、精神科医療は保安的役割を負わされてきた。強制入院の要件をポリスパワーに拠っていると理解されがちな措置入院制度は、医療観察法ができるまでは常にその代表であったろう。それでもこれまで措置入院制度は、運用によって比較的ポリスパワー的なニュアンスだけでなくパレンスパトリエ的な性格も併
せ持っていると捉えられることも少なくなかったのである。今回の改正法案には、その第2条にそれまでなかった第2項が加えられて、「精神障害者に対する医療はその病状の改善その他精神的健康の保持及び増進を目的として行われるべきものであることを認識するとともに」と、精神科医療の目的が明示されることとなった。犯罪防止を目的とした今回の法改正にお
いて、このような文言が書き込まれたことはなんとも皮肉なことだと言わざるを得ない。
精神科医療に携わる精神科医としては、どうしても措置入院後のフォローアップを中心とした法改正の動きが、精神科医療が保安の道具として利用されかねない事態が気になってしまう。しかし、相模原事件が私たちに問うているものは、それだけではない。今回の事件をヘイトクライムと捉えるべきだという論者は少なくないし、もちろん優生思想の問題として考
えざるを得ない。優生思想は決して私たちの思考から遠くにある思想ではない。医療者にとっては安楽死や尊厳死は日常的なテーマであり、これらのテーマは優生思想とそう遠くないところにあるはずだ。
そして、今回の事件は、事件被害者の方々が置かれていた状況のことをあらためて考えるように私たちに求めている。被疑者の歪んだ考え方は、当然被疑者に帰されるべきものであるが、そのような歪んだ考え方が作り上げられていくとき、彼の眼には彼の前に居る入所者たちがどのように映っていたのか。
本書の中で、座談会は精神科医4人によるものという、非常に偏った構成となった。論点の拡散を防ぐためやむを得ないことであったが、相模原事件が私たちに問うているのは、狭い精神科医療だけの問題ではない。本書が全体として、相模原事件が私たちに問うているものを広く明らかにしてくれることを願っている。


あとがき

中島 直

この本のもととなった精神医療誌の特集号(86号)が出た直後、精神科医の大先輩であり数々の場面で考えるべき方向性を示して下さる岡田靖雄先生からご批判をいただいた(相模原事件についておもうこと二つ三つ。
精神医療87、141、2017)。?相模原事件は単なるヘイトクライムではなくて、この国におこっているもっと根ぶかいものの現れではないのか。?(「大量殺人」との言葉について)人を"量"と表現することにはひっかかる。?ふるい優生思想への批判はここではもう役だたない。今回の特集に新優生学に正面きってとりくんだ論説はなかった。生殖技術がさらに進歩していくだろうことをかんがえると、新優生学とどうとりくむか、今すぐに議論をはじめてもおそいくらいである、と。
?はもっともっと考える必要があるだろう。?は、実は私は逆の思いを持っていた。司法精神医学の領域では「大量殺人」の語はよく用いられていて、私も時に用いてきた。この事件が、障害者が被害者であるがゆえに「大量殺人」であるという面が軽視されることをおそれ、むしろこの語を積極的に使った方がよいのではないかと思っていた。しかしご指摘の点は考える必要があると感じた。
残るは?である。本書中にも触れたように、相模原事件自体は「ナチス以下」であった。しかし現代の優生学は「ナチス以上」である。近年は「ナチス以下」の粗雑な論調もまかり通っているので、そうしたものにも抗っていく必要があると思うが、もちろんそれのみでは充分でない。新しい優生学に対し、どういう視点を示していけるか、私自身もはっきりしたものはないが、その枠組みの中からでなく外からという意味では、各論説はある程度の方向性を示しているのではないか、と感じている。
井原氏による、保安処分反対運動への批判の視点は鋭い。私は金沢学会をまったく知らない世代であるが、処遇困難者専門病棟や医療観察法に反対してきた者として、この批判は私にも突きつけられたものである。ここで論じ尽くすことはできず、いずれ別の形で論じたいと考えるが、ここでは一言だけ述べる。医療は保安を目的としない。保安目的で医療を歪める
ことには反対していくのが医療者のつとめである。しかし、医療が保安と無縁であると考えることもまた欺瞞である。何らかの制度ができればそれから逃れられると考えるのも事実に反する。要請には地域における実践で応えていくしかないし、むしろ実践家全てが、内容や程度の差はあれ、自らのものとして関わっていくべき課題である。保安処分反対運動はいろいろな考えを含んでいた。それは強さでもあったが弱さでもあった。
86号を作る際に、多くの方の助言を受けた。執筆して下さった諸氏やいろいろなご意見を下さった編集委員の方々はもちろんであるが、ここで名を挙げておきたいのは、障害者問題資料センターりぼん社の小林敏昭氏である。
私の拙い依頼に対して、的確にその意を読み取り、野崎氏、松永氏をご紹介下さった。小林氏とは、えん罪・野田事件の青山正さんの救援を共に担ってきた間柄で、30年ぐらいの付き合いということになる。今回に限らず、種々の示唆をいただいており、敬服したことは数えきれない。残念ながら最近終刊となった「そよ風のように街に出よう」の副編集長として発信を続けてこられたし、「青山正さんを救援する関西市民の会」の機関誌「殺したんじゃねえもの」の連載「鳥にしあらねば」は毎号種々の話題について鋭い切り口で分析している。付き合いが長いことは誇るべきかもしれないが、これだけ長期間をかけてもこの明らかな障害者差別にもとづくえん罪を晴らすことができていないということでもあり、忸怩たる思いもある。いつも私たちを鼓舞して下さる批評社のスタッフの皆さんとともに、名を挙げて感謝の意を表したい。


【執筆者略歴】
太田順一郎(おおた・じゅんいちろう)
1988 年岡山大学医学部卒業。岡山大学医学部附属病院、高見病院(現・希望ヶ丘ホスピタル)、岡山大学医学部附属病院助手、岡山県立岡山病院(現・岡山県精神科医療センター)副院長を経て、2009 年から岡山市こころの健康センター所長。著書に、『思春期外来 面接のすすめかた』(編著、新興医学出版)、『メンタルヘルスライブラリー33 精神保健福祉法改正』(編著、批評社)など。訳書に、『今日から始める統合失調症のワークブック』(監訳、新興医学出版)、『ミルトン・エリクソンの心理療法―出会いの三日間―』(共訳、二瓶社)など。

中島 直(なかじま・なおし)
1990 年東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、茨城県立友部病院(現・茨城県立こころの医療センター)医師、横浜刑務所医務部法務技官を経て、2001年から多摩あおば病院勤務。著書に、『犯罪と司法精神医学』(批評社)、共訳書に『米国精神医学会・拘置所と刑務所における精神科医療サービス』(新興医学出版社)など。

井原 裕(いはら・ひろし)
獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科教授。1987年東北大学医学部卒業、1994 年自治医科大学大学院修了、医学博士、2001年ケンブリッジ大学大学院修了、PhD 。2008 年より現職。専門は、うつ病、統合失調症、発達障害、プラダー・ウィリー症候群等。一方、精神保健判定医として医療観察法審判に関与。向精神薬多剤投与問題、精神鑑定、精神保健法制度等に関して、メディアでコメントをする機会も多い。著書として、『精神科医島崎敏樹―人間の学の誕生』(東信堂)、『激励禁忌神話の終焉』(日本評論社)、『精神鑑定の乱用』(金剛出版)、『思春期の精神科面接ライブ』(星和書店)、『プライマリケア
の精神医学』(中外医学社)、『生活習慣病としてのうつ病』(弘文堂)、『子どものこころ医療ネットワーク―小児科&精神科in 埼玉』(共編、批評社) 、『うつ病から相模原事件まで―精神医学ダイアローグ』(批評社)、『くすりにたよらない精神医学』(共編、日
本評論社) 、『うつの8 割に薬は無意味』(朝日新聞出版)、『うつ病の常識、じつは非常識』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『薬に頼らないこころの健康法』(産学社)ほか。

平田豊明(ひらた・とよあき)
1950 年、新潟市生まれ。1977年、千葉大学医学部卒。銚子市立病院を経て1985 年より千葉県精神科医療センター。2006 年より静岡県立こころの医療センター院長、2012 年から2017年まで千葉県精神科医療センター病院長。現在、学而会木村病院(千葉市)顧問。日本精神科救急学会理事長、日本司法精神医学会理事、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所客員研究員、社会保障審議会医療観察法部会委員など。専門は救急精神医学、司法精神医学。長年、精神科救急医療、医療観察法、精神医療審査会関連の厚生労働科学研究の分担研究者や執筆者として研究活動に従事してきた。

野崎泰伸(のざき・やすのぶ)
1973 年尼崎市生まれ。1996 年神戸大学理学部卒業。阪神・淡路大震災で被災した障害者を障害者自らの手で救援する「被災地障害者センター」で働いたのち、2007年大阪府立大学大学院人間文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。現在、立命館大学大学院応用人間科学研究科非常勤講師。専攻は哲学・倫理学・障害学。著書に『生を肯定する倫理へ―障害学の
視点から』(白澤社、2011年)、『「共倒れ」社会を超えて―生の無条件の肯定へ!』(筑摩書房、2015 年)。障害者問題を考える兵庫県連絡会議非常勤専従、社会福祉法人えんぴつの家評議員。

松永真純(まつなが・まさずみ)
1975 年生まれ。1998 年より15 年間、大阪人権博物館で学芸員として勤務。障害者や性的少数者に関わる展示を担当する。現在は大阪教育大学非常勤講師。

桐原尚之(きりはら・なおゆき)
1985 年青森生まれ。精神障害の当事者。2006 年全国「精神病」者集団・運営委員に就任。2012 年立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程入学。専攻は障害学。2014 年日本学術振興会特別研究員(DC1)。2017年第193 回通常国会参議院厚生労働委員会において当事者で唯一の参考人を務める。論文として「宇都宮病院事件から精神衛生法改正までの
歴史の再検討―告発者及びその協力者の意図との関係」(Core Ethics 11、2015 年)、「解放という視座を有する社会運動が社会に与える影響―『精神病』者解放・赤堀闘争の分析を通じて」(解放社会学研究28、2015 年)、「アイデンティティ政治における〈他者〉との連帯の意味付与―鈴木國男君虐殺糾弾闘争の歴史から」(現代思想 42(8)、2014 年)など、ほか多数。

富田三樹生(とみた・みきお)
1943 年新潟県生まれ、1969 年新潟大学医学部卒業。佐久総合病院を経て、1971年東大病院精神科―東大精神科医師連合に入る。2000 年5月多摩あおば病院に入り2002 年より院長。2000 年より精神神経学会の「精神医療と法に関する委員会」(現在法委員会)委員長。著書に『精神病院の底流』、『東大病院の精神科の30 年』、『精神病院の改革に向けて―医療観察法批判と精神医療―』(いずれも青弓社)がある。

熊谷晋一郎(くまがい・しんいちろう)
東京大学先端科学技術研究センター准教授、小児科医。日本発達神経科学学会理事。新生児仮死の後遺症で、脳性マヒに。以後車いす生活となる。東京大学医学部医学科卒業後、千葉西病院小児科、埼玉医科大学小児心臓科での勤務、東京大学大学院医学系研究科博士課程での研究生活を経て、現職。専門は小児科学、当事者研究。主な著作に、『リハビリの夜』(医学書院、2009 年)、『発達障害当事者研究』(共著、医学書院、2008 年)、『つながりの作法』(共著、NHK 出版、2010 年)、『痛みの哲学』(共著、青土社、2013 年)、『みんなの当事者研究』(編著、金剛出版、2017年)など。

大塚淳子(おおつか・あつこ)
1962 年生まれ、明治学院大学社会学部卒業、同大学院社会福祉学専攻修士課程修了。1987年東京コロニー東村山工場勤務、生活指導員等。1993 年医療法人社団一陽会陽和病院、同法人・こころのクリニック石神井にて医療相談室勤務、1999 年に精神保健福祉士資格を取得。2005 年社団法人日本精神保健福祉士協会にて常務理事職。2014 年度から現職、帝京平成大学健康メディカル学部臨床心理学科准教授として精神保健福祉士養成に携わる。2016 年同教授職。
公益財団法人日本精神衛生会理事、日本精神神経学会多職種協働委員会委員、日本・病院地域精神医学会評議員、犯罪被害者等施策の総合的推進に関する事業(横浜市事業2015-2017のSV)、東京都自殺対策会議委員、豊島区障害者計画・障害福祉計画策定委員、精神医療誌編集委員。共著『現場の力』尾崎新編(誠信書房、2002 年)など。

目次

はじめに ●太田順一郎―――――――――――――――――――――――――――――――3

座談会●相模原事件が私たちに問うもの―井原 裕+ 平田豊明+ 中島 直+[司会]太田順一郎―――――――――――――――――――――――――13
1●検証チームの議論/ 2●「入口」に関する議論/ 3●司法の問題として立件でき
なかったのか? /4●ダイヴァージョンの可能性/ 5●措置診察のチェックポイント?
/ 6●治療内容―とくに物質使用障害に関して/ 7●医療側は責任を問われるべ
きなのか? / 8●「出口」に関する議論/ 9●退院後のフォローアップ/ 10●まとめに
代えて

行為における自由意志と責任 ●野崎泰伸
―相模原事件に関する河合幹雄氏の諸論を批判的に検証する
―――――――――――――――――――――――――――――――61
1●行為の意図と動機づけの本質とは/ 2●河合幹雄氏の議論と主張/ 3●治安維
持という「大義」―優生思想は「妄想」か/4●行為と自由

接点はどこにあるのか ●松永真純――――――――――――――――――――――――72
1●はじめに/ 2●被害者の死をめぐって/ 3●「個」として、唯一無二の具体的な生
を生きる/4●究極の受動態としての誕生/ 5●善意と優生/ 6●人間が人間を敬う
こと

相模原事件を受けて、
これからの策動にどう抵抗するのか ●桐原尚之――――――――――――――――83
1●検討チームの最終報告書をうけて/ 2●“退院後の支援がルール化されていない”
ことは問題なのか/ 3●神奈川県警による失敗の追及が夜警主義的な考え方と結び
つくのか/4●“患者の利益”とは実のところどういったものなのか/ 5●医学者たち
に閉ざされた問いとしての“患者の利益”

美しい日本 ●富田三樹生
―相模原事件について―――――――――――――――――――――――――92
●はじめに/1●事件の経過/ 2●二つの問題

当事者の立場から考える自立とは ●熊谷晋一郎――――――――――――――――――108
●要旨/1●痛みが教えてくれたこと―自己身体への信頼と依存/ 2●依存症が
教えてくれたこと―他者への信頼と依存/ 3●自立が孤立にならないために

共に生きる社会を築く難しさを内にみつめて ●大塚淳子――――――――――――――116
1●はじめに/ 2●2016年7月26日/ 3●再び……の思い/4●検証の在り方に読
み取れるもの/ 5●放置されていた措置入院制度に関する見直し/ 6●求められてい
るのは支援という名の監視ではない/ 7●多様な市民の暮らしを身近に感じられる大
切さ/ 8●大学の教育現場で

保安処分反対主義の帰結は措置入院保安処分化 ●井原 裕
―相模原事件考―――――――――――――――――――――――――――128
1●保安処分反対イデオロギーの総括/ 2●医療機関は精神保健を、刑事司法は犯
罪防止を/ 3●保安処分反対主義者にとっての保安処分/4●イデオロギーに修正
主義はありえない/ 5●保安処分反対主義者の最終答案としての「山本レポート」/
6●保安処分反対主義者とその他の精神科医の世界観のずれ/ 7●保安処分反対
主義者の説明責任

差別と精神医学 ●中島 直
―産むのか、アンチテーゼになり得るのか―――――――――――――――――――143
1●医療観察法/ 2●野田事件/ 3●道路交通法・自動車運転致死傷処罰法/4●
差別と国家意志/ 5●精神医学と差別/ 6●おわりに
相模原事件から1 年が過ぎて ●中島 直
―――――――――――――――――――――――――――――――154

措置入院の話だけでなく ●太田順一郎―――――――――――――――――――159
1●それでもまず措置入院の話/ 2●国会審議など/ 3●措置入院の話を離れて/4
●差別する存在であること―細雪・教科書・波平恵美子/ 5●それでも差別と闘い
続けること―ゲイの少年・青い芝・ディストピア/ 6●葛藤の中で

あとがき ●中島 直―――――――――――――――――――――――――172

関連書籍