TOP 精神医療と人権を考える うつ病から相模原事件まで―精神医学ダイアローグ

うつ病から相模原事件まで―精神医学ダイアローグ

  • 井原裕著
  • 価格 1700+税円
  • 判型:46版判、184ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0657-1
  • 初版発行年月 2017年1月25日
  • 発売日 2017年1月25日

内容紹介文

精神科医療における強制治療はあくまでも「必要悪」である――精神科医療界の「常識」と「タブー」を覆し、相模原事件をテーマに精神科医療と治安政策を考察する。

――私は、すでに精神保健指定医として、精神科救急にも、医療観察法審判にも関わって...患者の人権と社会の安全という相互に衝突する価値観の間で困難な判断を下してきました。...でも、精神医学における「強制」は控えめにすべきです。強制治療は、あくまで必要悪であり、最小限に止めるべきだと考えています。

――私は、そもそも隔離・拘束も、強制入院も、電気けいれん療法も、それどころか薬物療法すら好きではありません。患者さんを縛ったり、閉じこめたり、無理やり入院させたり、電気ショックをかけたり、そんなことがしたくて精神科医になったわけではありません。
――では、精神科医の本来の仕事は何か。それは「話し合うこと」です。精神療法だって話し合いですし、それこそが精神科医のアイデンティティのはずです。
 そうである限りにおいて、この仕事はまだまだ捨てたものじゃないと私は信じています。[本文より]

目次

はじめに

第1章「疾患喧伝」(disease mongering)について取材を受ける―精神医学の欺瞞
今の精神科の医療は欺瞞だらけ?/疾患喧伝とは何か/病気か生理的な範囲か/製薬会社の疾患啓発活動/疾患喧伝にあおられる精神医学/「医者だから薬を使わないといけない」は間違い/うつ病に抗うつ薬は効くのか?/うつ病のガイドラインも変わる/脳循環・代謝改善剤の経験/薬物療法批判は単なる狂信的な活動ではない

第2章 うつ病と「こころの風邪」
ごあいさつは空中戦/世紀末疫病物語/真犯人は誰だ?/季節の変わり目の心の風邪/昭和時代の「こころの風邪」/「こころの風邪」とうつ病啓発/映画になった「こころの風邪」/うつ病啓発の意義/「こころの風邪」は「脳の病気」?/「牧畜業者」といわれた精神科医たち/おとぎ話の終焉

第3章 生活不活発病としてのうつ病
医療ジャーナリズムの世界/自殺者が三万人を切った理由/「傘がない」と団塊の自殺/自殺好発年齢は四〇、五〇代/高齢化しすぎると自殺は減る/お年寄の四人に一人が認知症?/ヘルス・リテラシーの要請/高齢者の生活習慣病としてのうつ/退職後、うつ状態を呈した七二歳男性/しゃべらないということが所見になる/リタイア後に元気がなくなる/精神科治療は見込み発車/治療は「低侵襲」なほうがいい/薬物療法を急がない/療養指導の実際/生活習慣は簡単には変わらない/薬は使うのか?/不眠を訴える高齢者に対する療養指導/高齢者に睡眠薬は使うべきか/高齢者の不活発は「死に至る病」/身体運動と知的志向の両立

第4章 双極性障害というジョーク
浪花医科大学から若手医師が見学に/VIPのうつ病/カリスマ医師淀屋橋工次先生/職業としての医者/天才かイカサマ師か/外来症例のカンファランス/面接の流れを予想する/課題を中心に面接を展開させる/職場のメンタルヘルス/復職のためのプランニング/診断書の書き方/双極性障害の治療/「うつ病」から「双極性障害」への診断変更/気分変動は病的ではない/療養指導なき薬物療法の弊害/誤診があり得ることを前提にした治療/患者さんの自助努力

第5章 相模原事件をめぐって―精神科医療と治安政策
メディア対応は説明責任/相模原事件と指定医問題は直接の関係はない/精神科医は警察官ではない/措置入院は強制治療/措置入院で医師は人権擁護の責任を負う/退院の際の責任/退院の判断は妥当か/「警察発、病院行き」の“片道切符”/思い込みは病気か/確信犯罪者は刑法学の課題/措置解除後の事件はこれからも起こる/「検討チーム」の刑法学者は機能していない/保安処分に関する議論/一元主義と二元主義/法の抜け穴をふさぐ措置入院制度/論争の歴史をどう総括するか/患者さんにどう説明するか/『イチゴ白書』をもう一度

おわりに

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