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中欧の街角から─ポーランド三都市・ウイーン旅行記

  • 副田 護著
  • 価格 1800+税円
  • 判型:46判、256ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0653-3
  • 初版発行年月 2016年10月10日
  • 発売日 2016年10月12日

内容紹介文

石畳を早足で歩くピンヒール美女
結婚指輪は右手薬指
トイレの激流で下半身に冷水
死のアウシュビッツに生の痕跡
中欧の大地は常識を否定した

中欧の街角に立って、異文化のなかに培われた歴史の痕跡を、今に残る建築物や遺跡、絵画や彫刻をとおして考える。
民衆の生活に色濃く馴染んだ食文化の香り、多言語社会の中で街行く民衆との相互交流をとおして、ドイツ(フランクフルト)、ポーランド(ボズナン→ワルシャワ→クラコフ)、オーストリア(ウイーン)のむささび旅行記。

【はじめに】
小学生のころから、ひとり娘のトモはちょこちょこ我が書斎に入ってきて、目についた雑誌や本を読んでいた。はじめは「少年マガジン」、「少年サンデー」などのコミック誌だったが、そのうち手当たり次第となってくる。
書斎には、コミック誌のみならず、「アップル写真館」、「SMマニア」から「文芸春秋」、「論座」まで、種種雑多な雑誌が積み上げられている。投稿全裸ヌードや亀甲縛りなどのグラビアを、トモは不思議そうに見ていた。子どもにはどうかなとも思ったが、取り上げたところで不在中に読まれたらそれまでだ。自由にさせていた。
いつか、トモは雑誌類より、本棚の書籍に手を伸ばすようになった。雑誌と同じく、書籍も種種雑多である。原稿の注文があったとき、それにあわせた参考資料として買い込んでいたからで、『中国飲食文化』『ミイラ信仰の研究』『中流と言う階級』と、まったく一貫性はない。ただ、近代史、特に戦争関連の書籍は何冊かの新書を書いたこともあって、まとめて並べていた。
それらから影響を受けたのかどうか、トモは二○歳のころ、
「アウシュヴィッツに行く、旅費は稼ぐ」
と言う。
「ま、自由にしてごらんよ」
と答えておいた。
大学冬季休暇のあいだ、寒風吹く店頭でクリスマスケーキ売り、ソーセージ売りをして膀胱炎まで患ったが、アルバイト代は旅費に不足していた。じゃ、まとめて稼ぐと大学の研究論文に応募し、研究費の名目で二0万円を獲得、嬉々としてポーランド・アウシュヴィッツに旅立った。
なにがトモの心情に訴えたのかはわからぬが、二年後、もう一度別の学内論文に応募し、今度は一五万円を給付され二度目のポーランド行きとなった。
卒業しても就職せず、派遣社員として働いていたが、貯めた金でふらりと三度目のポーランドに出かけてブリヂストン現地子会社社長秘書という仕事にありつき、それっきり居ついてしまう。年に一、二度帰国してはいたが、あるとき、結婚する、結婚式はポーランドであげると連絡してきた。
ちょうど同じころ、四兄の正の娘が結婚した。披露宴の席上、娘のトモも来夏ポーランドで結婚式を挙げるという話を兄姉にしたところ、
「そりゃあめでたい、ポーランドに行く機会なんぞ滅多にない、みんなで行こう」
と、なにがなんだかわからないうちに話が決まってしまった。
ありがたい話である。担当編集者として三○年以上の付き合いがあり、我が兄弟のゴルフ仲間でもある友人の吉留にこの話をしたら、夫婦で付き合おうと言う。トモのために、ポーランドくんだりまで来てくれることには、本当に感謝した。
残念なことに、トモが我が兄たちのなかでただひとり「オッチャン」とよび、大好きだった長兄の義也は、川崎市の審議会の日程とバッティングして来られなかった。次兄の拓二は結婚式当日がヨーロッパ出張中で、ブリュッセルでの会議終了後、直接顔を出すと言っていたが、会議が長引きそうで出席できないと後刻連絡があった。結局、「おじちゃん」「おばちゃん」の長姉の浄子、三兄の眞也・荊子夫妻、四兄の正、それに吉留博之・つや子夫妻の六人が同行することとなった。
これからの話は、ポーランド三都市、オーストリア・ウイーンを歩いた折々の思い出である。もちろん、娘の結婚式出席が目的ではあったが、それ以外にも、感じるところの多い旅ではあった。思うところの多い旅でもあった。
許されるなら、いつか同じ中欧の地を再訪したい。その時なにを感じ、なにに思うところがあるのか、確かめたいと願っている。

【著者略歴】
副田 護(そえだ・まもる)
1947年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。出版社勤務を経て医療・軍事・古代史などをテーマとして執筆活動を行う。
主著として、『戦艦大和のすべて』『健康・常識の嘘』『太平洋戦争49の謎』『世界の謎』ほか多数。

目次

中欧の街角から
──ポーランド三都市・ウイーン旅行記


はじめに

第一章──二〇〇九年六月四日(木)
美女ぞろいのCAに
かつての木崎湖畔バス車掌を思い出すこと

第二章──六月五日(金)
中欧の大地の恵みを結集させたボルシチに
不経済な舌が癪にさわったこと

第三章──六月六日(土)
炭坑節で
ポーランド伝統的祝い唄に対抗したこと

第四章──六月七日(日)
座って小用を足し
股間を縮みあがらせたこと

第五章──六月八日(月)
ホテルの部屋でひとり
炭坑節、黒田節、博多祝い唄に興じたこと

第六章──六月九日(火)
豊かで美しい中欧大平原に
モンゴル軍大遠征を追想したこと

第七章──六月一〇日(水)
六三本の線と髪の臭い、
窓外の荒涼とした風景に打ちのめされたこと

第八章──六月一一日(木)
ポーランドの「連帯」後は
日本の「敗戦」後によく似ていたこと

第九章──六月一二日(金)
上昇する国力を背景にした
国民の傲慢さに考えさせられたこと

第一〇章──六月一三日(土)
ヴァルトミュラーとの
偶然の邂逅に感謝したこと

第一一章──六月一四日(日)
TバックのCAに
父の担当女医のみずみずしい尻が浮かんできたこと

おわりに

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