TOP 差別と人権を考える 生老病死と健康幻想─生命倫理と優生思想のアポリア

生老病死と健康幻想─生命倫理と優生思想のアポリア

  • 八木晃介著
  • 価格 3000+税円
  • 判型:46判、342ページ、上製
  • ISBN 978-4-8265-0645-8
  • 初版発行年月 2016年9月10日
  • 発売日 2016年9月12日

内容紹介文


優生思想(社会ダーヴィニズム)と健康幻想(ヘルシズム)の反知性の論理とその対抗論理の実際を多くの具体的事例によって根源的に抉り出す3部作!

2016年7月26日、相模原市の「津久井やまゆり園」で起きた元職員による知的障害者の大量殺人事件は何を意味するのだろうか。
この事件の背後にあるものは、高齢化社会のなかで、自己意識のない了解不能なヒトは人ではないとするパーソン論と、健康幻想(ヘルシズム)を背景に「価値ある生命」と「価値なき生命」を区分けする優生思想(社会ダーヴィニズム)が国家意思と相俟って社会の底辺まで浸透していることである。
高齢者の医療・介護・福祉が国家財政に重くのしかかるなかで、後期高齢者医療制度の下で終末期医療におけるリビング・ウイル(患者自身が自分の意思を提示しておく文書)は、個々人の意思を超えて、専門家集団の誘導によって安楽死・尊厳死の社会的強制に転換してしまう可能性がある。
 ここ30年の間に喫煙者が減少しているのに肺癌死亡率が上昇する背景には、さまざまな要因が錯綜していて一概には言えない面があるが、フクシマ原発事故や全国の原発施設から出る放射性物質との因果関係を証す疫学調査は公表されても影響を認めることが決してない。しかし、放射能被害によって生じる甲状腺障害や白血病を否定的に強調すると逆に障害者の存在を否定する優生思想を助長することになりかねない。また、出生前診断によって「選択的中絶」が激増していることをみれば、この二律背反の構造に私たちはもっとも意識的になる必要があるのではないだろうか。

好評既刊
新装版『健康幻想の社会学─医療の社会化と生命権』

新装版『優生思想と健康幻想─薬あればとて、毒をこのむべからず』

目次

生老病死と健康幻想
──生命倫理と優生思想のアポリア
目次

はじめに──知的障害者大量殺人事件の衝撃

序 章 “生老病死”の前提と命題

(1)死者は生きている
(2)「死」と「死の過程」のコントロール
(3)生老病死する「こころ」と「からだ」
(4)“あるがまま”の生命倫理
(5)結語 メメント・モリ
コラム・終活と安楽死(尊厳死と尊厳なき生死)
コラム・エイジズムと私

第一章 “こころ”と“からだ”の仏教的臨床社会学

(1)「身よりおこる病」と「こころよりおこる病」
(2)「業病」と「仏罰」の差別観念
(3)仏教の病因論と治療論
(4)我執論と縁起論の生命観
(5)結語
コラム・親鸞思想と優生思想

第二章 出生前診断と優生学

(1)はじめに
(2)激増する「選択的中絶」
(3)操作される「自己決定」
(4)扉をひらく「遺伝的淘汰」の時代
(5)おわりに
コラム・遺伝的淘汰の意識状況
コラム・優生学的“選択的中絶”が激増
コラム・出生排除・生命否定のパーソン論

第三章 医療化社会をどう生きるのか
──イヴァン・イリッチの示唆と反示唆

(1)はじめに──支配とは服従である
(2)社会の不健康を隠蔽する権力作用
(3)医原病──過度の治療的副作用と治癒の義務化
(4)依存欲求とヘルシズム、そして「貧困の近代化」
(5)おわりに──擬制の終焉をもとめて
コラム・命を愚弄する医薬界
コラム・特定健診のナンセンスと漢方差別

第四章 「脱医療化」の模索

(1)はじめに
(2)『隠喩としての病い』の視程
(3)医療化のベースは“定義”
(4)暗中模索の脱医療化
(5)おわりに
コラム・隠喩としての“癌”
コラム・二十歳までに死ねば、“癌死”はゼロ
コラム・煙草が放射能の隠れ蓑?

第五章 延命治療は“無意味”なのか?
──安楽死・尊厳死法制化策動を批判する

(1)はじめに
(2)イデオロギーとしての安楽死・尊厳死
(3)安楽死・尊厳死裁判の経過(国内)
(4)安楽死・尊厳死合法化策動の経過
(5)“死なせる医療”の内包と外延・「パーソン論」糺弾
(6)おわりに
コラム・終末期ガイドラインの問題点
コラム・老人と若者の分断を許さない

第六章 健康幻想と優生思想

(1)はじめに
(2)「義務」としての健康・「義務違反」としての病気
(3)社会統制と健康
(4)「逸脱の医療化」と禁煙言説
(5)医原病としてのメタボリック・シンドローム
(6)安楽死・尊厳死の優生思想
(7)脳死・臓器移植と優生思想
(8)おわりに
コラム14子どもの安楽死とパーソン論

あとがき

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