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岩田弘遺稿集─追悼の意を込めて

  • 五味久壽編
  • 価格 3800+税円
  • 判型:A5判、424頁ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0633-5
  • 初版発行年月 2015年12月10日
  • 発売日 2015年12月12日

内容紹介文

岩田弘と「世界資本主義」――その人柄と理論的考察を検証する。

マルクス経済学のなかでも、一世を風靡した宇野(弘蔵)学派の特異な存在であった岩田弘が『世界資本主義』(未来社版)を刊行した当時(1964年)は、60年安保闘争の敗北から起ち上がってきた学生運動がニューレフト諸党派のしがらみを引きずりながら全学連再建を目指して互いに党派色を競い合っていた季節である。
こうした運動を背景に、ベトナム反戦運動や日韓条約反対闘争、大学管理法案反対闘争が闘われたが、その理論的支柱として『世界資本主義』は多くの若者の読者を惹きつけ、また、安保闘争で退陣した岸信介に代わって登場した池田内閣の高度経済成長戦略の意味を問う労働者が購読したため、3万部を超えたと言われていた。
1997年、山一証券の破綻で、日本資本主義は危機を深化したかに見えたが、資本主義は新たな資本蓄積をとおして危機を乗り越え、世界市場編成を成し遂げていった。
その後、1990年、ソ連邦の崩壊、中国巨大資本主義をはじめ、BRICsの登場によって世界経済は様相を一変したため、旧版『世界資本主義』を改訂して『世界資本主義 ?』(批評社版)を刊行し、さらに新たなコミュニズム(コミュニティ主義)の理論的枠組みを構想して『世界資本主義 ?』を目指したが、脱稿できないまま逝去された。
岩田弘の遺稿とさまざまな研究者による岩田理論の検証、そして追悼文を収録した遺稿集である。

【編者略歴】
五味久壽(ごみ・ひさとし)
1945年長野県に生まれる。1967年東京大学経済学部卒業。1973年同大学院経済学研究科博士課程満期退学。1980?2015年立正大学経済学部教授。立正大学名誉教授。博士(経済学)。著書に『グローバルキャピタリズムと世界資本主義』、『中国巨大資本主義の登場と世界資本主義』(いずれも批評社)がある。

目次

岩田弘遺稿集
──追悼の意を込めて──
目次

『岩田弘遺稿集──追悼の意を込めて』の刊行にあたって
五味久壽

第1部
岩田弘と世界資本主義

『世界資本主義・』のプランについて(解題)
五味久壽

1.「世界資本主義・」の当初プラン
中国新資本主義論ではなく中国革命論が主題に/基底にある中国の農民コミュニティ革命(農民コミューン革命)論/コミュニティと商品経済の位置づけの変化

2.『世界資本主義・』の全体イメージ

3. 各章に予定されていた内容のプラン

岩田弘と『世界資本主義』とを振り返って
五味久壽

岩田の人柄と発想法
岩田『世界資本主義』と筆者/筆者の世代が出会った『世界資本主義』/岩田の戦後危機体験と経営者的側面/戦後の混乱期の体験を基礎として考えた世代/篇別構成と首尾一貫性を最も重視/経済学の時事的側面に重きを置いた岩田/原理論と実証分析との関係/岩田の対話の仕方の特徴/岩田の対話の仕方と行動様式

1970年代から1990年代前半までの変化
1970年代における危機論からの転換/「資本とは機構の支配」という発想へ/『現代社会主義と世界資本主義』の位置/『資本の経済的組織原理』の執筆へ/『資本の経済的組織原理』執筆の中断とその理由/「グローバルキャピタリズム」の時代と試行錯誤

1990年代後半からの岩田の「コミュニズム」への転換
コミュニティ重視への転換とその契機/環境問題への関心による変化/留学生教育への注力と自動車産業への注目/2000年代の岩田/原理論の意味の縮小/最晩年の岩田と企業「革命」への関心/左翼の伝統的発想法からの転換/「コミュニティの包容性」・実質的革命論へ/労働過程とコミュニティ/『世界資本主義・』へ

『世界資本主義 ・』が提起しようとした問題
農民コミュニティ革命、さらに郷鎮コミュニティ革命としての中国革命/岩田のヨーロッパシステムと中国システムとの対比/谷川道雄の中国共同体論との共通性/谷川における中国「共同体世界の発見」/中国国家システム・商品経済・コミュニティ/清帝国における中国商品経済の急激な拡大とヨーロッパ世界商業/中国のナショナリズム/中国共産党の評価/中国の自動車社会化の意義/ 新情報革命の中心地中国は何を提起するか?/中国金融改革と景気循環

終わりに

グローバル資本主義とマルチチュード革命
──ネグリ&ハートの『帝国』に寄せて
岩田 弘

1. ネグリ&ハートの「マルチチュード」とマルクス革命論の二面性
2. ローザ・ルクセンブルクのマッセンストライキと近代工業プロレタリアートのコミューン
3. ネグリ&ハートのグローバル資本主義とマルクス経済学体系の二面性
4. IT革命・新産業革命とグローバル資本主義
5. 20世紀型社会主義運動からコミュニズム革命の原点へ

3.11後の世界と日本資本主義が直面する問題
──現代型製造業のグローバルなネットワーク化と新情報革命の世界史的意味
岩田 弘+田中裕之

〔一〕東日本大震災が提起した日本資本主義の基本問題
──日本資本主義における現代型製造業の地位
A 資本主義にとって大災害の被害と救済・支援の主体は何か?/B 企業の資本主義的性格とその二重の意味/C 製造業の世界史的展開と労働生産過程の組織化の意味

〔二〕現代型製造業のグローバルな再編成とその世界史的意味
──自動車産業が直面する制御系部品の電子化と部品供給のネットワーク化
A 部品サプライチェーン被害が提起する現代製造業の地位/B 部品生産のネットワーク化と電子情報制御システムの展開/C パソコンを軸とする情報革命の二重の意味

〔三〕新情報革命の現代的展開と中国世界市場の登場
──21世紀的革命としての新産業革命
A 21世紀パソコンネットワーク革命の現状/B グローバルネットワーク革命と中国巨大世界市場の登場/【後記】

経済学原理論序説
岩田 弘

経済学原理論序説(一)
──世界システムとしての資本主義とその経済的組織原理

第一節 自己組織体としての世界資本主義
一 世界システムとしての資本主義/二 地域システムとしての農業社会/三 農業社会と国家/四 農業社会と商品経済/五 資本主義の発生と国家/六 自己組織体としての世界資本主義

経済学原理論序説(二)
──世界資本主義の自己組織学としての経済学原理論

第二節 世界資本主義の自己組織学としての経済学原理論
一 資本主義の発生と経済学の発生──経済学の発生形態としての重商主義の経済学/二 古典経済学と労働価値説/三 『資本論』体系と資本主義

第三節 経済学原理論の篇別構成
一 経済学原理論の篇別構成/二 世界市場と資本主義的大工業/三 資本主義的大工業の内部編成/四 資本主義的大工業と世界市場

第2部
「世界資本主義」の現局面をめぐる鼎談

鼎談
始まった世界恐慌、その歴史的意義を問う
岩田 弘+五味久壽+矢沢国光
金融危機から産業恐慌へ/岩田の緊急提案/29年恐慌の歴史的課題は何であったか/29年恐慌の歴史的課題とその遂行プロセス/08年恐慌の特徴とその歴史的課題/産業再編と世界市場再編/アメリカの産業再編成はどうなる?/オバマの課題

鼎談
アメリカ金融危機が意味するもの
──29年型世界大恐慌は始まったのか
岩田 弘+五味久壽+矢沢国光
アメリカ金融危機から「世界恐慌」へ?/なぜ世界金融危機になったか/アメリカ産業の二極化/ニューディール政策とオバマ「第二のニューディール」/日本はどうなるか?/中国産業の可能性/中国とインドのIT産業/資源確保競争と今日の「帝国主義」論/世界政治のアメリカ体制の破綻/「世界危機論」の今日/中国革命と農村コミュニティ/コミュニティ/アメリカの政治的変革

鼎談
現代資本主義と世界大恐慌
侘美光彦+伊藤 誠+岩田 弘

【第一部】
現代資本主義はどのように世界大恐慌を回避したのか

現代資本主義はどのように世界大恐慌を回避したのか
○財政支出とインフレ体制、戦時経済との関連
戦時経済と大恐慌回避体制 /戦後的蓄積とフォーディズム/ケインズ効果か、フォーディズム効果か/戦後体制の政治的軍事的性格
○ドルを基軸とする固定為替相場制
為替の固定レート制と自由交換制のバッティング/基軸為替の金決済と国際通貨体制/ブレトンウッヅ体制と国際金本位制/ドル金決済の停止とブレトンウッヅ体制
○インフレの加速と変動相場制への移行
ドルの金決済停止とポンドの金決済停止/ドルの金決済停止と過剰ドルの累積

新自由主義の台頭と金融不安定性の増大
○ケインズ主義の行詰りと市場原理主義の台頭
スタグフレーションとケインズ主義の行詰り/戦後デモクラシーの行詰りと労働組合への攻撃/組合攻撃とマイクロエレクトロニクス革命
○新自由主義の現実的基盤と資本主義発展の螺旋的逆流
新自由主義の台頭と逆流する資本主義/レーガノミックスのケインズ的効果
○貨幣・金融の不安定性の増大
80年代の低経済成長と金融資産バブルの起動/ケインズ政策論的好況シナリオと長期不況論的金融資産バブルシナリオ/実体経済の停滞と金融不安定性の増大/金融資産バブルの加速と金融システムのバーチャル化

【第二部】
世界大恐慌の条件は熟しているか

世界大恐慌の条件は再び成熟しつつあるか
○バブルの崩壊と日本の平成不況
○金融自由化とアジア経済危機
○ITバブルの崩壊とアメリカの景気後退
(岩田コメント)貨幣市場と資本市場、株式会社における所有と経営

【第三部】
20世紀の世界史的総括と人類史的課題

現代資本主義分析の方法論的枠組み
○世界資本主義論と恐慌論的接近をどう活かすか
○ソ連崩壊の世界史的意味(および中国社会主義市場経済の意義)
○人類史の危機と分析の焦点

宇野経済学50年をめぐる座談会
大内秀明+櫻井 毅+岩田 弘 (記録・田中裕之)

〈導入〉

〈本論〉
・ 宇野原論の課題と問題点
・ 商品経済のロジックと国際関係、外部関係(純粋資本主義と世界資本主義)
・ 利子論、景気循環論をどう説くか?
・ 宇野理論と実践活動との関係性
・ ソ連社会主義の崩壊の意味
・ 共同体の根本問題(社会主義をめぐるマルクスとレーニンの問題、モリスの提起)
・ 08年アメリカ金融危機以降のグローバル資本主義と中国の登場、IT革命の現状
・ 宇野理論の展開と現状(鈴木原理論以降)

【コメント】
「宇野・岩田論争」が提起したもの
大内秀明
1)世界資本主義と一国資本主義、純粋資本主義の抽象の意味/2)「貨幣の資本への転化」と「資本の商品化」/3)段階論と移行論の違い/4)国家論の方法をめぐって/5)ソ連型社会主義の崩壊と「現状分析」の方法/6)宇野理論とコミュニタリアニズム(共同体社会主義)

【講演】
岩田弘の世界資本主義論とその内面化論としての経済理論
櫻井 毅

第3部
追悼 岩田弘先生

追憶の二重丸
伊藤 誠

岩田さんの人と学問
山口重克

岩田先生を偲ぶ
河村哲二

岩田弘先生の追悼の意を込めて
福岡克也

最晩年の岩田先生から学ぶ
田中裕之

岩田弘年譜

あとがき
五味久壽

初出一覧

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