TOP [雑誌]精神医療 「精神医療」79号 特集=自閉症スペクトラムの<支援>と<治療>を問う

「精神医療」79号 特集=自閉症スペクトラムの<支援>と<治療>を問う

  • 木村一優+高岡 健=責任編集
  • 価格 1700+税円
  • 判型:B5判、128ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0623-6
  • 初版発行年月 2015年7月10日
  • 発売日 2015年7月10日

内容紹介文

自閉症がレオ・カナー(Leo Kanner)が1943年に発表した論文ではじめて明らかになった自閉症概念は、DSM-?(アメリカ精神医学会の操作的診断基準)においてはじめて「神経発達障害(神経発達症群)というカテゴリーに入れられたが、果たしてこれは疾病概念として精神医学、医療の実相を反映したものだろうか。
DSM???は、当時の社会において果たした役割や社会的影響は否定できませんが、もっとも大事なクオリティ・オブ・ライフのライフ(生命と生活の質と実)を排除してしまっている。
例えば、かつての日本の生産現場では、農業労働者が50%以上を占めていたが、現在は10%以下の人たちしか生産労働にかかわっていないのが現実です。90%の人たちはどうでもいい仕事、あってもなくてもいい仕事にしかかかわっていません。医師の仕事も同じで、あってもなくてもいいかもしれないけれど、あった方がちょっとぐらいいいかもしれない程度の仕事です。今の社会では殆どの人たちがサービス産業に従事していて、本当に私たちが生きるために生産している労働にかかわっているのではありません。そこにKY(空気が読めない)という見えない関係のなかで呻吟する若者たちに発生した問題の根拠があると思うのです。

人間が進化してきたのはあくまで自然なプログラムのうえに乗ってきたからで、生物多様性こそ自然界のなかで生き抜くための武器です。細菌が強いのは自分をどんどん進化して変えることができるからです。自然淘汰のなかで生き残ってきたヒトが生物多様性を拒否して、その後に独自の文化・文明を獲得してきた結果、社会淘汰のなかでしか生き残れない絶滅危惧種になってしまった。
人間が遺伝的多様性に依存できないとすれば、頼れるのは神経学的多様性、脳の多様性です。それも人為淘汰ではなく自然淘汰に耐えられる多様な脳の在り方を持つ人間です。そうした文脈で持続可能性を考える時代だと思います。
しかし、遺伝子は生まれた時から全部決まっているということはなく、環境によって発現することが多いので、自閉的な方向へ引っぱる遺伝子を活性化する環境が整い出しているのが現在の社会環境、生活環境です。
DSM-?の自閉症の診断はカナーの時代から50年以上経っているのに変わっていません。また、治療効果の報告も無節操に変わっています。そもそも自閉症について治療効果を評価することは医学的にできませんから、非医学的な<支援>という言葉が使われているのではないでしょうか。
ですから精神医療において治療という言葉は使わない方がよいと思えるくらいです。治療というレベルで言えば、遺伝子レベルを含む解析を行って、そのレベルに対応する科学物資が出てくるまで治療と呼べるほどのものが出てくるとは思えません。
自閉症スペクトラムという連続した自閉症状の本質をめぐって多様な視点から問題の所在を読み解いた総力編集の特集号です。

目次

no.79
責任編集=木村一優+高岡 健

特集
自閉症スペクトラムの〈支援〉と〈治療〉を問う

巻頭言*「自閉症治療」の彼岸
木村一優

石川憲彦先生インタビュー*DSM-5から見えるものとクオリティーとしての発達
石川憲彦+[インタビュアー]木村一優

自閉症スペクトラム〈診断と治療〉の変遷
――その批判的検討
田中容子

軽度三角頭蓋手術の問題点
――自閉症スペクトラムにおけるピグマリオン効果について
伊地知信二+伊地知奈緒美+木村一優

自閉症スペクトラムと〈支援〉の本質
――重度訪問介護の対象拡大と生活支援の療育化/地域の施設化
岡部耕典

児童福祉施設で暮らす子どもたちにおける自閉症スペクトラム
生地 新

エッセイ*自閉症スペクトラムとわたし
小道モコ

エッセイ*自閉症論の原点・再論
高岡 健

コラム+連載+書評

視点―40*看護師は小さい医師になろうとしているのか
――「特定行為に係る看護師の研修制度」という愚策
阿保順子

連載*雲に梯―19
おまめであたんしか
久場政博

新連載*
対等な関係性を求めて――わたしの個人的総括 (1)
新居昭紀

コラム*社会的入院者としての退院と13年後の現実
渡辺秀憲

書評*『プシコ ナウティカ――イタリア精神医療の人類学』
松嶋健著[世界思想社刊]
安原荘一

紹介*『多摩あおば病院のあゆみ Vol.2』
医療法人新新会多摩あおば病院
浅野弘毅

紹介*『沖縄における精神保健福祉のあゆみ――沖縄県精神保健福祉協会創立55年記念誌』
北村毅編著[財団法人沖縄県精神保健福祉協会刊]
古屋龍太

編集後記
高岡 健

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