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アウトローで「フクシマ」

  • 吉田雅人著
  • 価格 1800+税円
  • 判型:46判、248ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0622-9
  • 初版発行年月 2015年7月10日
  • 発売日 2015年7月15日

内容紹介文

フクシマの渦中にいながら、
見失ってしまったものを
外在者のアウトローの眼で
ラジカルに抉り出す。
ユーモアとイロニーの織りなす
乾坤一擲の一大叙事詩。

「フクシマ」の内部被曝の脅威をヒロシマ・ナガサキの被曝体験と合わせて、この国の今、を考えると、
あと何年か、「フクシマ」の写し絵となって過ごすと、大勢の人に被曝の症状があらわれ、有効な治療法もなく、もがき苦しんだ末、死んでいくのを目の当たりにする
私とて矛を納める時となる
だが、本当に恐ろしいのは
そう、こうして「静かな死」に向かい合っている、今だ

2011年3.11から4年という時間が経った。
にもかかわらず、「死」が隠されたことによって、私たちはものを見る目を曇らされた。『古事記』にあるのに。イザナギは愛するイザナミがやけどで亡くなったのを嘆く余り、葬った黄泉の国に行き、イザナミの変わり果てた姿を見ることになる、腐りかけて蛆のたかっているイザナミの姿を。
生と死も一対の言葉である。原子力発電所はどうか、日本に導入されたいきさつをみれば、明らかに核兵器と一体のものである。表の顔が原子力発電所で裏の顔が核兵器製造所ということだ。
「芸術は爆発だ」と言った岡本太郎、その通りだと思う。ただ、万博公園に据えられた巨大な「太陽の塔」がそれを具現しているかはともかく、内部に設けられた「生命の樹」はいい。この樹は、敦賀発電所、引き続き完成した美浜発電所から送電された電力で、「原子力の灯が会場に届いた」と、電光掲示板に表示されたのを大勢の人が怒涛のような歓声を挙げて仰ぎ見たのをどんな気持ちで思い遣っていたのであろうか。

わたしたちの父の世代が負う「ヒロシマ・ナガサキ」、しかし、「ゲンパツ」は私たちの世代が負わねばならない。敦賀原発1号機は「フクシマ」1号機と同じGE社の沸騰水型軽水炉である、これは原子炉としては欠陥であると指摘されていた、GE社の技術者が職を賭して、構造的に爆発の危険性があると告発していた代物、それを何らの改良も加えず、GE社に言われるまま建造した。勿論、「フクシマ」が起きるまでもトラブルを幾度も起こしている、幸いなことにたまたまそれが爆発につながらなかったというだけのことである。それが取るべき安全上の対策を怠ったために、ついに地震・津波を引き金にして、前代未聞の惨事・「フクシマ」を引き起こした。東京電力の勝手気儘にさせておいた私たちにも大いなる責任がある。
当時の高木孝一敦賀市長は平然と言っている。「新聞、マスコミは騒ぐけれど、さっぱりわからない。(汚染魚を)1年食ったって規制量の量にはならない。しかし、魚は売れない。100円損したんなら、精神慰謝料50円を含んで150円貰いなさい、原電の方は、少々多くても、もう面倒臭いから出して解決しますわ、1年1回ぐらいは、あんなことがあればいいがなあ」と。
原発の誘致に関しては、「三法(電源三法交付金)のカネは貰うけれども、裏金をよこせ、協力金をよこせ、というのが、それぞれの地域である。それに『もんじゅ』、その危険性、うん、いやまあ、入ってくるカネが60数億円になろうかと。まあそんなわけで50億円で運動公園は出来るわ」とつづく。そして、「その代わりに50年後に生まれた子供が全部片輪になるやら、それはわかりませんよ」と、原発の誘致を薦めている。
私たちは同時代を生きる者として、こんなさもしい、不遜な言動を許してしまっている。こうした素地を私たちは持っているのだ。
何ごとも蟻の穴から堤も崩れるで、まあまあと見過ごすうちにとんでもない事態になるのを許しているのが私たちの日常性である、ああ、くわばら、クワバラ、断じて許してはならぬのは、それは私だ。(「まえがき」・「あとがき」より)

【著者略歴】
1944年、宝塚市に生まれ。京都教育大学卒。大阪府立高校教員。退職。
詩集『ひの女』、長詩『私のラプソデー』、定本 物語詩『ひの女』、詩集『私説能楽集』(以上、オリジン出版センター)、詩集『児の館・特別手記』(日本文学館)

目次

アウトローで「フクシマ」
もくじ

まえがき

第1章 込められたぶつぶつ第2章 内部被曝第3章 いらだち第4章 事実は語る

第5章 座して死を待つか第6章 ひっつきお化け

第7章 ノウ・モア・ゲンパツ

第8章 さてと、対策だが

第9章 歴史はめぐる第10章 走為上第11章 無音の世界で白昼夢はまわる

第12章 忍び寄るクライシス

第13章 そこのけそこのけ諭吉が通る

第14章 最初にして最後の夜明けへと

第15章 うそかまことかの皮膜

第16章 クライシスは大袈裟が丁度よい第17章 そんなあほな

第18章 潮は満てり さあ、どうするか

あとがき

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