TOP メンタルヘルス・ライブラリー ボケを活きるとは─精神科医の加齢体験と認知症ケア論

ボケを活きるとは─精神科医の加齢体験と認知症ケア論

  • 久場政博著
  • 価格 1800+税円
  • 判型:A5判、179ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0621-2
  • 初版発行年月 2015年5月25日
  • 発売日 2015年5月27日

内容紹介文

普通ボケ(老い)と病的ボケ(認知症)に生じる心身機能低下について、「いま・ここ」をキーワードに解き明かし、その対処法を編みだしたユニークな実践的ケア論。医療・看護・介護関係者、認知症をかかえる家族、高齢期で悩んでいる方、必見!!

●毎日の生活は、合目的性作業と浮動性作業の無限連鎖です
●「もの忘れ」「ど忘れ」「もの探し」は、たんに記憶力の低下?
●認知症の行動・精神症状は、「周辺」症状でしょうか
●「もの盗られ妄想」は、なぜ身近な人に生じるのでしょう
●認知症全経過のケアは、病期にそった初期・中期・後期で重点目標がちがいます
●行動・精神症状の介護ケアは、喜と楽でつつむ
●ボケは「呆け」ではありません
●老いを磨き、老いに惚れるには

人はみな、自分専用の「とき」列車にのって「いま・ここ」に一時停止しながら、人生を旅しています。
高齢になるとは、列車を引っぱる機関車、それに連結している車両に耐用年数の劣化が生じてくることです。人としてみれば心身機能低下(昔流にいえばボケ)といえます。
心身機能低下には、加齢による「普通ボケ」と脳疾患による「病的ボケ」(認知症)があります。しかし、「もの忘れ」「ど忘れ」「もの探し」は記憶力の低下として簡単にくくられますが、自分の体験や日々の臨床経験から腑に落ちない点が多々あります。
認知症の人たちがあらわす行動・精神症状はクスリでしか治療できないものなのか、心のなかは空虚でとらえどころのないものなのか、いままでの治療・介護観に疑問をもつようになりました。
認知症で「いま。ここ」に停車している個々人の「ときの列車」を安心してゆっくり静養させる手だてはないものなのか、とさまざまに悩みました。既成の心身機能低下論から離れて、普通ボケの体験と病的ケアの臨床経験からえられた仮説を使って検証すると理解しやすくなるのではないか、普通ボケにどう対処したらよいのか、病的ボケにどう向き合ったらよいのか、日常の心がまえについてヒントを呈示できればと思っています。

[著者略歴]
昭和16年 台湾台北市に生まれ、東京で育つ
昭和41年 東北大学医学部卒業。翌年、東北大学精神医学教室入局
昭和45年 上山市の上山病院
昭和57年 公立角館総合病院神経精神科勤務
       長期在院統合失調症の社会復帰活動
平成12年 秋田市の清和病院
平成14年 秋田市の加藤病院に勤務、現在にいたる

目次

MHL35
ボケを活きるとは
――精神科医の加齢体験と認知症ケア論

はじめに

第1章
毎日の「いま・ここ」

1●「いま・ここ」の生活
(1)「いま・ここ」とは
(2)生活とは「作業」
  「作業」とは
  夕食の後片付け
   ・)開始⇒実行(前作業)
   ・)実行(本作業)
   ・)実行(後作業)⇒終了
  微積分および遍在としての「作業」

2●作業のコントロールは
(1)それは「モニター司令室」
  モニター司令室の点検3能力
  点検3能力の背景
  モニター司令室の作業目標達成機能
(2)モニター司令室を支える「脳と身体」
 全身センサーと脳内モニター
 認知システムと情動システム

3●「いま・ここ」に活きるため
(1)記憶が基礎
  記憶の定義と時間過程
  体験の既知・未知を照合
(2)「いま・ここ」と「記憶素キー」
  記憶素キーについて
  モニター司令室と記憶素キー

4●モニター司令室は「心(こころ)」の入口
  「過誤調整」と思考
  「心(こころ)」とモニター司令室

第2章
普通ボケの素顔

1●普通ボケはどこで
  一日いたるところ

2●普通ボケのさまざま
(1)「もの忘れ」はモグラ叩き
  「もの忘れ」のタイプ
   w【○つき】-A)実行時「忘れていた」もしくは「忘れてきた」ことに気づく
   w【○つき】-B)実行時「憶えているはず」のものが再生できない
   w【○つき】-C)「ひらめき」が走り忘れていたことに気づく
  「もの忘れ」のメカニズム
(2)「ど忘れ」と「もの探し」
  「ど忘れ」と「もの探し」のタイプ
   d【○つき】-A)「直前および直後」のことを忘れたと不安になる
   d【○つき】-B)「直前までの確信」ができない
   s【○つき】-C)「目の前のもの」が消えてあれこれ詮索する
  「ど忘れ」と「もの探し」のメカニズム
(3)「間違い」と「身体機能低下」
  「間違い」と「身体機能低下」のタイプ
   m【○つき】-A)主に見る(読む)聞く言う
   m【○つき】-B)主に手(書く)の動き
   k【○つき】-C)身体機能低下
  「間違い」と「身体機能低下」のメカニズム

3●普通ボケ対処のヒント
  合目的性作業を慎重に
  浮動性作業の活性化
  その他の対処法
  心身機能低下からみた普通ボケ

第3章
病的ボケの現実

1●医学の対象です
(1)疾患としての病的ボケ
  病的ボケの診断基準
  認知症の四大疾患
(2)症状は心身全体に
  中核症状の基本3項目
  中核症状の計算問題
  行動・精神症状
  認知症の身体症状

2●中核症状は必須
  S家の状況
  初秋の頃

3●精神症状は多彩
(1)妄想と幻覚は身近で
  S家の状況
  厳冬のある日
(2)別の世界に
  S家の状況
  晩秋の頃
(3)ぼんやりもくどい訴えも症状
  S家の状況
  盛夏のある日

4●行動異常は状況に左右
(1)どうしてそんなことを
  梅雨のある日
(2)当人も周囲も困惑
  S家の状況
  早春の頃

5●病的ボケを「いま・ここ」でとらえると
  行動・精神症状の輪郭
  病的ボケと普通ボケの比較
  「いま・ここ」体験での比較
  心身機能低下としての病的ボケ

第4章
認知症の医療と介護

1●医療と介護
  臨床医学的アプローチ
  行動・精神症状の病理
  認知症の介護

2●進行性認知症の診断は慎重に
  認知症か否かの鑑別診断
  治りうる認知症
  認知症病期の枠組み
   ・)初期の指標
   ・)中期の指標
   ・)後期の指標

3●認知症初期の医療と介護
  本人と介護者の悩み
  初期の治療
  初期の介護

4●認知症中期の医療と介護
(1)穏和を心がける――中期の医療
  中期の治療
  支える場はどこで
  医療と介護の連携
(2)喜と楽でつつむ――中期の介護
  「いま・ここ」の安心と安全
  「いま・ここ」の喜びと楽しみ
  語りを傾聴

5●認知症後期の医療と介護
  後期前半の医療と介護
  後期後半の医療と介護
  終末期の延命処置

第5章
高齢期を生き活き

1●ボケは「呆け」でしょうか
  痴呆から認知症に
  ボケと「呆け」の混交
  ボケに適切な漢字は

2●人の生を顧みると
  生まれ活きるとは
  病と災難
  老いとは
  死とは

3●高齢期と仲よく
  普通ボケの影と光
  老いを磨く
  老いに惚れる

おわりに

参考文献

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