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「精神医療」78号 特集=クスリをめぐるディープな事情

  • 岡崎伸郎+高木俊介責任編集
  • 価格 1700+税円
  • 判型:B5判、176ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0617-5
  • 初版発行年月 2015年4月6日
  • 発売日 2015年4月10日

内容紹介文

クスリは医療にとって不可欠なものです。しかし、反面、クスリは多剤・大量投薬によって患者さんの心身に多大な負担を強いるものでもあります。特に、精神科の薬物療法をめぐる事情は複雑で根深い問題をたくさん抱えていて、製薬メーカーの戦略に乗せられて病に効かないクスリも治療の名の下に使われている現実(うつ病治療薬SSRI、SNRI)がある一方、病のリスクに過ぎないものが病と診断されて治療の対象とされてしまい、場合によっては新たな病が簡単につくり出されることすらあるのではないかと危惧されます。
先進国における製薬メーカーは、死病を治療する特効薬から高齢化社会で需要が高まった健康増進薬にシフトして、国の早期発見、早期治療の喧伝と相俟って、保健医療の健康産業化への取り込みによって無際限の医療化が蔓延していくように思えます。
製薬メーカーは患者さんが死なないで一生同じクスリを飲んでくれることを期待しているわけですから、操作的診断基準(DSM)に基づいて一定の診断が下されればそれに見合ったクスリが処方されると、長期間、あるいは一生同じクスリを飲むことになります。精神科の場合は診断が難しいせいか、というよりも根本的に「精神」の定義が古来より不分明で、クスリの処方の範囲が広いため、うつ病治療薬SSRI、SNRIの場合は、うつ病を超えてパニック障害、脅迫障害、PTSD、社会不安障害、はてはひきこもりにまで適用範囲が拡大して万能薬の様相を呈してしまうことになります。そこに多剤・大量投薬、副作用による弊害と製薬メーカーとの利益相反が絡んで、クスリをめぐるディープな事情が潜んでいるといえます。
最近の新聞報道(webも含めて)によれば、2013年度に国内の製薬メーカーが医療機関(2951億円)や医師を集めての講演会や説明会(1446億円)の他、医師個人(295億円)、交際接待(75億円)など、提供した資金の総額は4768億円だという。医師個人に支払った金銭情報の公開が個人情報保護を理由に1年遅れたのは日本医師会と日本医学会の反対があったからだという。さらに問題なのは、高齢者が処方されたクスリを飲まずに放置している「残薬」で、年間475億円もあるという。
ことほどさように「クスリをめぐるディープな事情」の背後には複雑な利益相反が絡んでいるようだ。臨床精神薬理学の専門家をはじめ、国立・公立・民間の病院、大学、クリニックで日々臨床に携わっている精神科医、薬剤師によって薬物療法をめぐる憂慮すべき諸問題を徹底的に明らかにした増頁総力特集号。

目次

精神医療78号

特集=クスリをめぐるディープな事情

責任編集=岡崎伸郎+高木俊介

編集=『精神医療』編集委員会

[巻頭言?]現代人の万能薬―向精神薬のたくらみ(岡崎伸郎)

[座談会?]クスリをめぐるディープな事情(八木剛平+井原裕+高木俊介+[司会]岡崎伸郎)

日常臨床における製薬企業との利益相反――筆者の場合(仙波純一)

子どもの精神科薬物療法(田中康雄)

薬を巡る「知」の在り処について(菊池孝)

病院薬剤師から視た向精神薬のマーケティングと薬物療法(柳智之)

認知症に対する精神神経薬処方の事始め(宮永和夫)

持効性注射薬から精神科治療を考える(松尾幸治)

精神科における多剤大量処方――その実態、企業マーケティング、そして利益相反問題(伊藤哲寛)

コラム+連載+書評

[視点 39?]多剤併用の診療報酬減算措置問題(中島直)

?〈互酬性・アニミズム・シャーマニズム・トーテミズム〉―12「アフリカ的段階」と「二つの心」そして意識の二元性(森山公夫)

[?雲に梯 18]おがえんし(久場政博)

[コラム?]ここにしか咲かない花(川口夏生)

[書評?]『自閉症連続体の時代』立岩真也著[みすず書房刊](石川憲彦)

[書評?]『声と妄想―臨床精神病理論文集成』浅野弘毅著[医学出版社刊](?田知二)

[書評?]『気分障害は、いま―うつと躁を精神病理学から問い直す』津田均著[誠信書房刊](田中容子)

[編集後記](高木俊介)

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