TOP 教育・心理 特別支援教育における教育実践の研究─指導記録の書き方と生かし方

特別支援教育における教育実践の研究─指導記録の書き方と生かし方

  • 山之内 幹
  • 価格 1800+税円
  • 判型:A5判、176ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0612-0
  • 初版発行年月 2014年12月10日
  • 発売日 2014年12月12日

内容紹介文

ことばと 
からだを
こころがつなぐ
特別支援教育の実践記録

重度重複障害児の教育実践とはこれほど大変なことかと思わずにはいられない。著者の30年にわたる教育実践の記録である。

重度障害児は寝返りができない。スプーンで飲むこともできないし、排便もできないが、空腹になれば泣いたり笑ったり、「アーウー」と声を発することはできる。その声を聞き分けることができないと教師は勤まらない。寝返り指導だけが指導ではないが、子どもたちの自発的行動を促す支援は教師らの手作り遊具が効果的である。うまく物を握れない子どもたちにはスポンジの鈴、蹴ると音の出る太鼓、自力移動するためのスケボーや、音を楽しむフリーハンドベル、卓上ビー玉ゲーム機、子どもたちと教師が一緒に楽しむボードベースボールなど、多種多様な独創的な手作り遊具は教育実践には欠かせない。
聴覚障害をもった聾児とのコミュニケーションのむずかしは、教師が言葉と不慣れな手話を交えてわかりやすく伝えようとしても子どもたちは、言葉の意味を自分たちの立場で理解する。
赴任したてのころ、子どもたちに「あんたは臭い」と鼻をつまんだ真似をした子どもに扇子で煽られたり、いじめられていた子をかばったら、逆にその子から「あんたは頭が悪いからすぐに怒る」と言われた。何て失礼な!と怒りを露わにしたら、子どもたちは目配せして手話でひそひそしゃべっていた。
笑顔ですれ違ったら、「何かおかしいの?」と言われ、黙って腰掛けていたら「何を怒っているの?」と昨年担任した女子から言われた。別におかしいわけでもなく、怒っていたわけでもないのだが、この子は私も気づいていないいつもと違う私を感じて何かを察したのだろうと思う。
かん黙児とのコミュニケーションも、しゃべらない、一人で遊ぶ、かかわろうとすると体を硬くする、おやつやジュースには手を出さない、抱っこすると泣きそうなるが、他の子と一緒にするとしゃべったり遊んだりするので、抱っこすると笑いがあらわれた。褒めると非常に意欲的に取り組む。声には出さないが表情で覗う場面が出てきた。「字を覚える時は、声を出しながら書きなさい」と言ったら初めて声を出した。カタカナを声を出しながら一生懸命覚えている。あいさつができるようになった。結局、「しゃべらない」のではなく、「しゃべれない」のであり、「しゃべれない」のではなく、物事の知識、理解が不充分なのではないのか。かん黙児は黙っていることで自分を守っているのかもしれない。今、教師にとって一番大切なことはじっと待つ指導ではないかと思う。
特別支援教育の子どもたちとの関わりとは別に、普通学校の小学生たちの間でも仲間はずれにされてひとりで登下校していた女の子がいた。いじめに遭って無抵抗のまま暴行を受け殺された男の子がいた。子どもたちに寄り添うということの難しさをつくづく感じるが、何かを感じ取ろうとする目を持つこと、寄り添うこと、生きる選択肢を教えること、今の私にはこの3つのことをいつまでも忘れずにいることだけだと思う。

目次

特別支援教育における教育実践の研究
――指導記録の書き方と生かし方

もくじ

まえがきにかえて
なぜ、日々の記録を書くようになったか

第1章 指導記録の書き方と生かし方
1・指導記録の書き方/2・指導記録の形式/3・指導記録の生かし方
閑話(1)お叱りを受けたこと

第2章 重度重複障害児の寝返り指導
1・実態について/2・指導の目的/3・指導の内容と方法/4・指導の経過/5・今後の課題/補遺
閑話(2)Mさんの思い出

第3章 場面かん黙児の変容
1・実態について/2・指導の目的/3・指導の内容と方法/4・指導の経過/5・まとめ/補遺
閑話(3)真智子の八月踊り

第4章 「聞こえにくいこと」について――聾教育の現場から
1・最初のエピソード/2・伝えることの難しさ/3・よく見ている/4・表情の激しさ/5・手話歌/6・聞こえにくいことについて/7・子どもが教えること/補遺
閑話(4)N先生への手紙

第5章 聾学校における授業(自己)評価項目の作成
1・問題と目的/2・方法/3・授業(自己)評価項目作成の実際/4・検討/5・まとめと今後の課題/補遺
閑話(5)一粒の種

第6章 聾児へのペープサートによる生活指導の一試み
1・問題と目的/2・指導事例/3・まとめ/補遺
閑話(6)伝え合い、わかり合うことについて

第7章 重度重複障害児の自発行動を促す支援――手作り遊具を通して
1・問題と目的/2・支援経過/3・まとめ/補遺
閑話(7)就学相談会で

第8章 音を楽しむフリーハンドベルの製作
1・問題/2・ハンドベルの製作過程/3・まとめ/補遺
閑話(8)大神島の話

第9章 障害児と健常児が共に楽しむボードベースボール
1・はじめに/2・セッティング/3・主なルール/4・実践の様子/5・実践でわかったこと/6・おわりに/補遺
閑話(9)命について?K先生からのメール?

第10章 障害児と健常児が共に楽しむボードベースボール
1・現場の教師による教育実践の研究法/2・指導記録を生かした授業案づくり
閑話(10)寄り添うことについて

監修者のことば:吉川武彦(清泉女学院大学・短期大学 学長)

あとがきと謝辞

初出一覧

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