TOP Problem&Polemic:課題と争点 中国の海洋戦略─アジアの安全保障体制 PP選書(Problem&Polemic:課題と争点)

中国の海洋戦略─アジアの安全保障体制 PP選書(Problem&Polemic:課題と争点)

  • 宮田敦司著
  • 価格 1800+税円
  • 判型:46判、184ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0602-1
  • 初版発行年月 2014年6月16日
  • 発売日 2014年6月18日

内容紹介文

元航空自衛官による中国の海洋戦略とアジアの安全保障体制の分析と検証

飛躍的な経済成長を遂げて膨張する中国の海洋戦略は、アジアの安全保障体制にどのような影響をもたらすのだろうか。
中国の国防予算はアメリカの25%とはいえ、前年(2012年)比12.8%増(13兆4000億円)だが、GDPは前年比7.6%増で経済成長からすると国防予算の占める割合は突出して高い。中国経済社会の安定的成長は、国内はもとより周辺諸国との緊張緩和によってはじめて可能である。
中国の海洋戦略は多岐にわたるが、空母「遼寧(ロシア製旧ワリヤーグ)」を実戦配備するには、かなりの時間と訓練が不可欠なため、「包括的な国力の象徴」、中国の力の尊厳の象徴だと言う(前中国海軍司令官・劉華清)。空母戦闘群で艦隊を編成するには、ミサイル巡洋艦、駆逐艦、フリゲート艦、ミサイルフリゲート艦、潜水艦、補給艦が不可欠だが、中国はアメリカの艦隊には到底及ばない。
現在(2012年現在)、中国海軍は、兵力25万6千人、主な艦艇は空母1隻、潜水艦57隻、駆逐艦27隻、フリゲート艦51隻、ミサイル高速艇93隻、高速艇153隻、哨戒艇32隻、ドック型輸送揚陸艦1隻、戦車揚陸艦27隻、中型揚陸艦53隻、海軍陸戦隊旅団2個、戦闘機200機、ヘリコプター51機、海軍航空隊を保有している。これらで第一列島線、第二列島線の東シナ海、南シナ海、さらにインド洋から南シナ海の真珠の首飾りと言われる海洋を射程にいれて監視体制を構築しようとしている。
2014年3月28日にベルリンで講演した習近平国家主席は、中国はアジア太平洋地域で「覇権や拡大」を求めることはない、と明言し、「相互理解」を呼びかけた。しかし、2014年5月、南シナ海の領有権をめぐって中国とベトナムの艦船が衝突する事故が勃発した。その後、ベトナム中部の台湾企業の工場で反中国の暴動が発生し死者1名、負傷者90名を出す事件が起こった。
こうした緊張関係が東シナ海に起こる可能性がないとはいえない。尖閣列島問題や竹島問題を抱える日本にとって中国の海洋戦略を冷静に分析して沈着な態度で臨まなければならないのは言うまでもないが、尖閣列島問題は、かつて来日した鄧小平が語ったように、「(尖閣諸島問題で)我々には知恵がない。後の世代に解決を託そう」。アジアの安全保障体制を考えるうえで、この言葉の意味は重要である。排他的経済水域(EEZ)や防空識別圏(ADIZ)をめぐって、あるいは領域、領海をめぐって相互に対立し、緊張関係が醸成された場合、いかなる場合においても外交努力を積み重ねていく以外に解決の道はないのが現実である。
図版・写真を多用して、中国の海洋戦略を分析し、アジアの安全保障体制を検証した研究者の必読文献である。

【著者略歴】
1969年名古屋市生まれ。ジャーナリスト、北朝鮮研究者、韓国語・朝鮮語翻訳者。
1987年?航空自衛隊入隊。航空自衛隊第5術科学電算機処理員課程修了。
1989年?日本大学法学部政治学科入学、1994年卒業。
1999年?日本大学大学院総合社会情報研究科博士課程修了。北朝鮮研究で博士号(総合社会文化)を取得。
著書として、『北朝鮮の人間改造術、あるいは他人の人生を支配する手法』(講談社、2010年)、訳書として、李ジョンヨン著『北朝鮮軍のAtoZ-亡命将校が明かす朝鮮人民軍のすべて?』(光人社)ほか。

目次

PP選書[Problem & Polemic:課題と争点]
中国の海洋戦略
――アジアの安全保障体制

はじめに

第1章
中国海軍の戦力と近代化

第1節 中国海軍の戦力
1 総兵力
2 対米防衛ライン

第2節 空母保有
1 スクラップで技術を蓄積
2 「第4の艦隊」新設へ
3 実戦配備はいつか?
4 空母保有の目的

第2章
拡大する中国の影響力

第1節 西太平洋
1 沖ノ鳥島をめぐる問題
2 太平洋に進出する海軍艦艇
3 海上自衛隊、中国潜水艦の警戒監視を強化
4 潜水艦による哨戒活動の急増

第2節 インド洋
1 インド
2 バングラデシュ
3 スリランカ
4 パキスタン
5 ミャンマー
6 セーシェル

第3節 東南アジア
1 ベトナム
2 タイ
3 カンボジア
4 フィリピン
5 マレーシア
6 シンガポール
7 ASEAN諸国

第4節 アメリカ

第5節 日本
1 水上艦艇の動向
2 潜水艦の動向
(1)石垣島・宮古島間領海侵犯
(2)足摺岬沖領海侵犯
(3)久米島南方接続水域航行
3 海洋調査船の動向
4 中国海軍機の動向
5 AEW(早期警戒)機の洋上進出
6 中国軍機の尖閣諸島接近
7 中国の東シナ海における防空識別圏設定

第3章
日本海へ進出する中国軍

1 国際海峡の対馬・津軽・宗谷海峡
2 韓国
3 北朝鮮
(1)港湾の租借
(2)領空通過

第4章
中国の海洋戦略

国防と経済
鄧小平の三段階戦略
軍の革命家、現代化、正規化
国連海洋法に背く中国
中国海軍の任務

(資料)
1 中国海軍が保有する艦艇
2 主要艦艇の性能諸元

おわりに

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