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人間学的福祉論─木の生き方に学ぶ

  • 島崎義孝著
  • 価格 2500円+税円
  • 判型:A5判、272ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0601-4
  • 初版発行年月 2014年5月25日
  • 発売日 2014年5月27日

内容紹介文

人間社会をもっとも根底的なところで成り立たせている宗教的エートス(宗教社会学的な考察)を研究テーマとする視点から、現代社会の歪んだ構造とそこから逸脱せざるをえなかった人びとを救済する社会福祉の思想と運動を理論的実践的に解明した現代福祉論。

一次産業の衰退に合わせるかのように、二次産業、三次産業(IT革命)が現代社会の労働や生活の基底を支えている。さらにはグローバリゼーションによって、国民経済社会は猛烈なスピードで交錯する膨大なネット情報や金融流通のネットワークなしには成り立たない。その結果、かつて共有されていた価値観や規範、地域社会や家族関係の絆は変質・崩壊してしまい、自然や人間相互の関係のなかで生きるしかない個々の人間もそうした影響を多大に受けることになる。総じて社会ダーヴィニズム(優生思想)や市場原理主義によって過酷な競争原理が蔓延し、すべての事象が相対化されて、絶対的な理念は国家に一元化されるが、国家もまた国境なき国家として周辺・辺縁国家との協調なしに存続できない。
この不分明な時代のなかで、生老病死の循環をまっとうして生きていくために、一人ひとりの人間が他者にとっては周辺部に属し、他者の生命を支える糧になっているという人間存在の本質を知ることが大切である。

孔子の弟子「敢えて死を問う」。師曰く「未だ生を知らず、いずくんぞ死を知らん」
空海「生まれ生まれ生まれ生まれて生のはじめに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに暗し」

著者略歴
京都市生まれ。東北大学文学部大学院中途退学。社会学専攻、文学修士。大徳寺専門道場で修行を経て、現在、臨済宗妙心寺派多福院住職、藍野学院藍野大学短期大学部教授。
著書に、『陰凉軒後藤瑞巌老師事蹟』(ふくろう出版、2005)、『現代福祉マンダラ』(2006、ふくろう出版)、その他論文多数。
訳書に、『アメリカ社会福祉政策史』(相川書房、1997)、『無生死の世界』(ふくろう出版、2004)。

目次

人間学的福祉論
木の生き方に学ぶ
目次

はじめに
しあわせを考える三つの柱 自然・社会・個人

第1章
再考・福祉とは何か
3・11東日本大震災の悲劇と教訓
1●当たり前は当たり前でなかった
2●三重苦をもたらした東日本大震災
3●原子力発電という現実
4●科学者の良心と共感
5●見えない相手

第2章
わが国の社会的救済の階梯
1●「情誼」のこころ
2●飛鳥時代から奈良・平安時代
3●武士の時代の権力と人民救済の方法
4●江戸幕藩体制のなかでの人民統治
5●立憲主義国家の民生
6●大正デモクラシーとその凋落
7●戦後の民主化時代へ

閑話(1)木がつくる国家

第3章
戦後の社会福祉のあゆみ
1●公的福祉の進展 憲法の精神
2●社会福祉法

第4章
生活保護法の位置
1●生活保護の理念と成立
2●生活保護の運用
3●生活保護受給の現状
4●水際作戦と不正受給
5●格差社会の顕在化

閑話(2)懸衣翁と奪衣婆の木

第5章
福祉国家論の衰退
1●福祉国家論への途
2●福祉国家の危機
3●戦後の日本と「福祉国家」
4●新たな「福祉国家」の再構築にむけて
5●福祉国家の基礎

第6章
社会福祉の財政
費用の負担
1●国家の社会福祉財政
2●地方公共団体の社会福祉財政
3●共同募金
4●措置費
5●費用負担
6●復興予算

閑話(3)1枚の葉

第7章
社会保障制度
1●社会保障の考え方
2●世界人権宣言と日本国憲法
3●日本の社会保障のあゆみ
4●社会保障制度審議会のこと
5●社会保障審議会の再編

第8章
年金など社会保険制度
1●社会保険の基本的な考え方
2●わが国の社会保険の今昔
3●公的年金の種類と加入するべき制度
4●格差是正の努力

閑話(4)お釈迦さんの木

第9章
少子化の時代の子どもたち
1●子どもの誕生
2●戦後の児童福祉の展開 「児童福祉法」
3●少子化のなみ
4●児童の貧困

第10章
「障がい者」という捉え方
1●「障害」とは何か
2●異なる障害の次元
3●障害者数の数え方マジック
4●障害者保護の歴史的な流れと新しい知見の紹介
5●障害者自立支援法

閑話(5)希望を与える木

第11章
やがて辿る途
高齢者をめぐって
1●長寿は幸せか
2●高齢人口の増加

閑話(6)木から現われる 弥勒菩薩像と円空仏

第12章
住みにくい世のなか
1●時の流れと人の世
2●いじめ
3●虐待
4●孤独死・無縁死
5●自殺

閑話(7)木に学ぶ

第13章
産業化・情報化する福祉の世界
1●産業化する以前の社会福祉のかたち
2●「措置から契約へ」 社会福祉の変貌
3●福祉ニードの構造と福祉産業の登場
4●生活産業としての福祉産業
5●情報化の波のなかで

閑話(8)大木が少なくなった

第14章
自力で立つ
権利の擁護とその後押し
1●他者の助けなしには生きられない人間
2●「育てる」ということ
3●エンパワメント(empowerment)
4●アドボカシー(advocacy)
5●社会参加 自分の足で立つ

閑話(9)盆栽の小宇宙

第15章
専門職とは何か
1●「資格」の時代と専門家
2●「専門家」とは何か
3●社会福祉・医療など対人サービスの専門性と倫理性
4●専門職のひとつの指標として 感情労働

第16章
「福祉の文化」をめぐる断章
1●福祉の文化
2●福祉教育
3●福祉の「受け手」と「送り手」
4●燈々無尽ということ

閑話(10)森を活かし、森と生きる

第17章
世界の福祉の動向
欧米、アジアの社会福祉
1●異文化社会の福祉を学ぶ意義 共通の基盤
2●現代欧米の社会福祉のあゆみ
3●アジアにおける社会福祉の現在と将来

閑話(11)人と一生をともにしてくれる木

第18章
潜象的領域と顕象的領域
1●素朴な疑問から
2●科学主義的世界の近代
3●円環「主義的」世界
4●顕象的領域と潜象的領域の交響
5●割れ鍋と綴じ蓋の現実

あとがき

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