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安重根事件公判速記録(初版)翻刻版

  • 注記・解題 礫川全次
  • 価格 2700+税円
  • 判型:A5判、216ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0596-3
  • 初版発行年月 2014年2月25日
  • 発売日 2014年2月25日

内容紹介文

「安重根事件公判速記録(初版・編纂兼発行所滿洲日日新聞社)の翻刻版である。註記と解題を付し、事件の全貌を解読する。

2014年1月19日、中韓両国が中国黒竜江省のハルピン駅に安重根記念館を建設し、安重根の生涯や事件に関する資料、写真などを展示しているというニュースが流れた。すぐさま日本政府は中韓両国に抗議声明を発したが、「安重根事件」に関してどの程度知悉していたのであろうか。

1909年10月26日、安重根(アン・ジュングン)は、中国東北部のハルビン駅頭で初代韓国統監・伊藤博文をなぜ殺害したのか。安重根は裁判においてその理由を概略下記のように陳述している。
「日露戦争の時、日本天皇陛下の宣戦の詔勅には東洋の平和を維持し韓国の独立を強固ならしむという事から韓国人は大いに信頼して日本と共に東洋に立たんことを希望しておった」。しかし、韓国統監伊藤博文の政策は、五箇条の保護条約、七箇条の日韓協約(1905年)の不平等条約を脅しと強要によって締結させられ、民衆は塗炭の苦しみの中に陥れられた。憤った韓国民衆は国家のために決起し十万人もの人達が虐殺された。さらに、伊藤公は、韓国皇帝陛下を抑留し廃帝までした上に、李氏朝鮮の第26代国王・高宗の王妃であった閔妃が1895年、三浦梧楼らの計画に基づいて王宮に乱入した日本軍守備隊に暗殺された事件を想起すれば、伊藤公の政策は韓国民衆にとって許し難い犯罪であった。
安重根は、伊藤公殺害は、「三年前からの考えを実行したに過ぎないので、それも私は義兵の参謀中将として独立戦争を哈爾浜(ハルピン)でやって伊藤公を殺したのであるから決して一個人としてやったのではありません。...東洋平和のためにやったのであります。...伊藤公は...韓国皇帝陛下の外臣...である。」にもかかわらず、「日本の皇帝(天皇)に対して逆賊であるということを聞いております。わが皇室に対して逆賊というのは現皇帝の先帝(孝明天皇)を...」と発言したところで裁判長が裁判の公開を禁止する宣言をしてその日の裁判は終わった。その後、公判は続けられたが公判記録はない。
この事件は、日本の公爵伊藤博文が露西亜(ロシア)の大蔵大臣ココフツオフと列車で会談し、ハルビン駅で下車して露国儀仗兵の閲兵の最中に勃発した。さらに、中国国内で韓国人によって日本の公爵が殺害されるという複雑な国際関係のなかで起こった事件である。日本人の二人の弁護士が日本の法体系では裁判できない論拠を公開裁判で思う存分展開している。とてもスリリングな内容になっているが、現代文ではないのでちょっと読みづらい。謎多き現代史を解読するために是非とも一読をお勧めしたい。

目次

安重根事件公判速記録:目次
緒言
伊藤公遭難顛末
安重根事件公判速記録 満州日日新聞記者速記
明治43年2月7日午前10時開廷
一般の取調/安重根訊問/教育と信仰/三年間の目的/憤慨の理由/発砲事実は自認す/兎徳淳との関係/藤公来東の報道/出発の準備/安と劉との関係/安と鄭との関係/安の哈爾浜着後/曹道先との関係/南行の旅費/李剛に送り書面/哈爾浜より南行/安重根の取調(午後の部)/短銃と弾薬/三年の宿望/凶行の準備/決行の瞬間/縛に就きし模様/指を切って同盟/安重根の申立/独立義軍の参謀/

二日目の公判(八日午前九時一一分開廷)
兎連俊の素性/兎裏塩(ウラジオ)に至る/安重根との関係/凶行の密議/藤公を狙ひし理由/五ケ條條が大不平/安重根に同意す/哈爾浜行の旅費/ピストルと弾丸/汽車中の安と兎/露語は解せず/哈爾浜着後の兎/藤公来着の日取/哈爾浜の形勢を窺ふ/曹道先を訪ふ/写真撮影/伊公嘲罵の歌を作る/安重根の書簡/哈爾浜出発/蔡家溝に於ける/哈爾浜に打電す/蔡家溝に取残さる/独力決行せんとす/兎も伊公を知らず/暗殺の準備/曹道先と兎徳淳/蔡家溝で検査/曹と二人で経歴話/不得止と断念す/日本大官の到着/韓国人は皆逮捕/国民としての義挙/集金掛を一ケ月/李鍚山を知らず/曹道先の申立/哈爾浜に入る/曹の家族/曹道先の教育/重根と道先/安と同行の約束/曹と鄭との関係/拳銃は護身用/蔡家溝で下車/藤公の来遊を知ず/伊公到着当日/夢の中中に伊公通過/曹捕縛さる/電報の内容/

三日目の公判(九日午前九時五十分開廷裁判長は劉東夏に対する事実取調を開始したり(関東都督府嘱託統監府通訳生園木末喜通訳)
劉東夏の申立 劉の経歴/教育と信仰/安と兎との関係/哈爾浜に出発/哈爾浜に於ける安重根/旅費を借りらんとす/手紙と歌/電報料を受取る/電報の意味/安の哈爾浜再帰/安の書簡/安の遺留品/劉予審を否認す/偽名の理由/父に宛て手紙を書く/安の上前を刎ねんとす/

午後の部 午后一時十分(再び開廷)
証拠取調べ/安の短銃/官房長の証言/露国軍曹の証言/食堂の主人/古谷久綱氏/随行の医師/公爵の傷部/森氏の傷部/川上領事の証言/田中満鉄理事/目撃せし日本人/安兎連名の書翰/安重根自作の誌/兎連俊の作歌/女房は他人顔/凶行現場の下見/ダムダム弾/決死の書簡/手分けで決行/汽車中決心を語る/電報の顛末/予審申立否認/劉の逃口上/東夏を小僧扱/拳銃取調/凶行者の携帯品/嘘の云ひ競べ/歌と詩/意見陳述申請/安根の気焔/

第四日目 検察官の論告
第一事実論/各被告の性格 劉東夏/曹道先/兎徳淳/安重根/犯罪の動機/犯罪の決意、模様、日時、場所/犯罪の機会及行為の状態/
第2法律論/第一、訴訟法上の問題/第二、実体法上の問題/
弁護人の弁論
鎌田弁護士 緒論/本論 「其一」先決問題/「其二」本論の弁論 (イ)事実の認定 総論/各論/(ロ)劉に対する法律適用論
水野弁護士 刑の量定 刑罰の主義論/我刑法の主義/死刑要求の当否/弁護人要求の本刑/酌量減軽/日本維新前の刺客/維新後の日本の刺客/韓国の刺客事件/政策上の利害/逝ける伊藤公の要求/結論/

公判最後の一時間 安重根以下の最後の申立/劉曹兎の申立/安重根の申立/余は誤解せず/五箇條は暴力/七箇條は脅迫/韓民十万殺さる/日本国内の怨声/況や韓国民をや/余は捕虜なり/判決

●『安重根事件公判速記録』(初版)の翻刻にあたって:目次
付録1 「露国大蔵大臣コーコフツオフ氏訊問調書」
付録2 「安重根が伊藤博文を敵視する理由十五箇条」
付録3 「満洲ニ於ケル領事裁判ニ関スル法律」
解題

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