TOP 歴史のなかの闇を探るProblem&Polemic:課題と争点 日本保守思想のアポリア PP選書(Problem&Polemic:課題と争点)

日本保守思想のアポリア PP選書(Problem&Polemic:課題と争点)

  • 礫川全次著
  • 価格 1890円
  • 判型:46判、204ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0582-6
  • 初版発行年月 2013年6月21日
  • 発売日 2013年6月24日

内容紹介文

近代日本に保守主義は存立しえるのか?!
「國體」という虚構のイデオロギーに支えられた日本の保守思想を解剖する。

「尊皇攘夷」を錦の御旗に、倒幕・権力奪取した明治維新政府は、近代化・欧化政策を推し進め、日本古来の伝承文化を解体する一方、欽定の帝国憲法を制定するなど、新たな「保守主義」を創造し、アジア支配を目指す覇権国家として再出発した。「王政復古」という名の<断絶>と<継承>を支えたのは、「國體」という虚構のイデオロギーであった。「國體」というキーワードをとおして近代日本の保守思想を解剖する。

日本の保守主義の系譜は、明治維新政府の創建を象徴する「五箇条の御誓文」に行き着くが、「五箇条の御誓文」は、明治天皇が「天地神明に誓った」誓約であり、平民主義の精神が貫かれ、立憲君主制(君臨すれども統治せず)の近代憲法としての明治欽定憲法に生かされている。
帝国憲法の成立過程は、第5章にみるように、『ありとあらゆる制度を、欧米をモデルとして整備した。「木に竹を接ぐ」どころか、接ぐ対象となる「木」すらないところに、ありとあらゆる制度をゼロから創りあげたと言ってもよかった。それを最もよく象徴するのが、帝国憲法であった。実際、「朕国家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノ欣栄トシ」で始まる「上諭」にしても、その草案は、ドイツ人法律顧問の手になるものだった』というように、シュタインやロェスレルといった外国人の知見を借りなければできなかったのである。

安倍内閣の登場によってにわかに活況を呈してきた感のある保守主義と市場原理主義は、自民党の憲法改正草案と日銀への政策介入、規制緩和と増税政策に端的に表れている。自民党の憲法改正草案は、憲法を少しでも考えたことのある人には噴飯物でしかないほど稚拙であり、憲法の立憲主義を政治権力の統治に求めるのではなく、国民を統治するかのように認識しているが、これでは明治維新政府の帝国憲法をも否定することになる。
 アジア太平洋戦争の敗戦後にGHQの管理下で制定された現代憲法は、外国によって押しつけられて制定された憲法ではなく、明治帝国憲法の成立過程をみれば明らかなように「自主」憲法を継承しつつ、戦争の悲惨を二度と繰り返さない反省の上に創られた憲法ということになる。

目次

PP選書[Problem & Polemic:課題と争点]
日本保守思想のアポリア*目次

まえがき………3

Q&A 本書をお読みいただく前に………7

序 章
御誓文とデモクラシー………21

●「人間宣言」と「五箇条の御誓文」・22/●「五箇条の御誓文」と戦後民主主義・25
●保守主義とは何か、「國體」とは何か・27

第一章
御誓文とマッカーサー………29

●御誓文と普通選挙・30/●辞書ではどう説明されているか・33
●木戸孝允がはたした役割・35/●金子堅太郎が語る御誓文の由来・38
●大政奉還から御誓文へ・41/●金子、再び御誓文の由来を語る・44
コラム1 貞永式目と「誓の精神」・48

第二章
明治国家のアイデンティティ………49

●明治維新と日本の國體・50/●金子堅太郎の『憲法制定と欧米人の評論』・52
●「皇国数百年ノ國體ヲ一変シ」・56/●木戸孝允「建白書」の読み方・60
●天下の大勢を看破した政治家・64/●「洋風を模擬し、神州之國體を汚し」・67
●「日の丸」とアイデンティティ・70
コラム2 神戸事件で切腹した瀧善三郎の碑・73

第三章
憲法制定と國體論争………75

●「建國ノ體」としての國體・76/●佐々木高行の密書・78
●金子堅太郎の國體観・82/●伊藤博文と金子堅太郎の論争・85
●伊藤博文と明治国家形成・88/●「我国の機軸は何なりや」・92
●「名実共に皇室の藩屏たらしめ」・95/●元田永孚の國體観と国憲論・98
●名を捨てて実を取った伊藤博文・102
コラム3 和辻哲郎が敗戦後に発表した國體論・107

第四章
神代文字とルーン文字………109

●「シュタイン詣で」とシュタイン問題・110/●丸山作楽と「皇国の國體」・113
●暗夜に星を得た海江田信義・116/●シュタイン、日本の宗教を論ずる・119
●シュタイン、神道を論ずる・121/●丸山作楽、神代文字を示す・125
●「スタインで固い頭を敲き割り」・128/●『須多因氏講義筆記』の刊行・131
コラム4 振り仮名とも送り仮名ともつかない符号・134

第五章
「明治のバーク」金子堅太郎………135

●金子堅太郎と井上毅・136/●金子堅太郎の『政治論略』・138
●尾佐竹猛とエドマンド・バーク・141/●明治憲法におけるバーク思想の影響とは・145
●金子堅太郎と「歴史法学」・149/●金子堅太郎は「明治のバーク」か・153
コラム5 金子堅太郎と「大東亜戦争」・157

終 章
シュタインの忠言………159

●伊藤博文の憲法演説・160/●大津事件と明治天皇・162
●帝国憲法「上諭」のドイツ語草案・165/●「伝統」は創られる・170
●「革命と謂わずして復古と云う」・174/●「日本人ハ東洋開明ノ義兵ナリ」・178
●維新のネジレから「尊皇攘夷の血戦」へ・181

参考文献………186

あとがき………193

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