TOP サイコ・クリティーク 市民のための精神鑑定入門 裁判員裁判のために

市民のための精神鑑定入門 裁判員裁判のために

  • 高田知二著
  • 価格 1785円
  • 判型:46判、224ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0558-1
  • 初版発行年月 2012年4月10日
  • 発売日 2012年4月12日

内容紹介文

裁判員裁判がはじまったなかで、精神鑑定にかかわる諸問題がクローズアップされている。刑事事件の裁判において、精神障害のある被疑者の精神鑑定は専門家である精神科医にゆだねられることが多いが、精神科医の鑑定が立場や理論の違いから相反する鑑定が出ることもまれではないが、複数鑑定は裁判の迅速化から忌避されつつある。精神鑑定は具体的にどのようにして行われるのか。鑑定書ではどのようなことが明らかにされるのか(実際の鑑定書を参照)。鑑定結果が裁判にどのような影響をもたらすのか。精神科医の鑑定は精神医学的知見や精神医療の実際とのかかわりにおいてどういうプロセスを経て導きだされるのか(【コラム】「市民のための精神医学講座」1?6を参照)。裁判員裁判では、事件の概要から検察官の陳述、弁護人の陳述、被告人の陳述などのほかに、裁判員は精神科医の鑑定結果を読み込まなくてはならない。また、被疑者が「うつ病」「自閉症」「アスベルガー症候群」「人格障害」と鑑定されても、裁判員が「うつ病者が殺人を犯すことなどできないから鑑定書は信頼できない」と、短絡的に「責任能力はあるのだから有責」とするような判断がまかりとおる場合もある。
日本の刑事裁判においては、被疑者の責任能力の判断が大きな要素を占めている。刑法39条(第1項において心神喪失者の不処罰を、41条において14歳未満の者の不処罰を、39条2項において心神耗弱者の刑の減軽を定めている)の問題点、心神喪失者等医療観察法の問題点など、精神鑑定もめぐる問題は多岐にわたるが、これから裁判員になられるであろう多くの市民にとって精神鑑定は避けてとおることのできない問題である。現役の鑑定医が精神鑑定の全貌を分かり易くまとめた入門編である。

目次

はじめに/精神鑑定とは何か/冤罪のない裁判のために/法律の適用の問題/責任能力をめぐって/執筆にあたって/責任能力の判断の難しさ I.市民のための精神鑑定 総論 第1章 刑事手続/1)事件発生/Aさん 男性 傷害被疑事件被告人 事件時89歳/2)逮捕から精神鑑定まで/留置・勾留/代用監獄の問題性/精神鑑定へ 第2章 責任能力鑑定/1)責任能力とは/今に生きる大審院判例(1931)/生物学的要素と心理学的要素/鑑定項目/2)可知論と不可知論/コンベンションという考え方/精神科での診断/日常臨床に根ざした精神鑑定/精神鑑定でどこまでのことが分かるか/3)精神鑑定の裁判所による評価/コラム・市民のための精神医学講座(1)高齢者の妄想症(パラノイア)状態 第3章 刑事精神鑑定の種類/1)4つの刑事精神鑑定/2)本鑑定/精神科医は学識経験者たれ/3)鑑定人選定の思惑/4)起訴前鑑定/起訴便宜主義の問題点/精神保健福祉法とは/措置入院の問題性/心神喪失者等医療観察法の問題点/刑法39条と起訴便宜主義/責任能力判定のダブルスタンダードと簡易鑑定/嘱託鑑定と簡易鑑定/5)私的精神鑑定/裁判員裁判と公判前整理手続/公判前整理手続と私的精神鑑定/口頭鑑定の問題性/コラム・市民のための精神医学講座(2)精神医学的診断とは 第4章 精神鑑定の実際/精神鑑定の実際/情報収集と被疑者との面接/面接のまとめと診断/統合失調症という診断の根拠/犯行時の精神状態/現在の精神状態/参考事項/詐病についての検討/鑑定主文/よりよい精神鑑定と精神医療のために/コラム・市民のための精神医学講座(3)統合失調症 第5章 精神鑑定の聴き方・尋ね方 1)鑑定人について/注意すべき尋問内容/鑑定医の「党派性」/鑑定医の中立性について/2)鑑定内容について/供述調書の引き写しではないか?/診断の根拠は明確か?/操作的診断基準一辺倒ではないか?/3)「7つの着眼点」について/「7つの着眼点」の問題点/「7つの着眼点」にとらわれない判断を!/4)鑑定人尋問について/鑑定はいつなされたのか?/注意すべき尋問内容/5)鑑定医への尋ね方/コラム・市民のための精神医学講座(4)精神疾患と身体疾患

II.市民のための精神鑑定 各論 第6章 私的精神鑑定/1)私的精神鑑定とは/2)事例/事例1 Bさん 女性 現住建造物等放火事件被告人 犯行時41歳/私的精神鑑定/判決/事例2 Cさん 女性 現住建造物等放火事件被告人 犯行時40歳/私的精神鑑定/判決/事例3 Dさん 女性 強盗致傷事件被告人 犯行時55歳/私的精神鑑定/判決/3)私的精神鑑定の意義/4)私的精神鑑定の困難性/5)心神喪失者等医療観察法との関係で/コラム・市民のための精神医学講座(5)非定型精神病
第7章 酩酊事件/1)酩酊とは/ビンダーの分類/酩酊状態と責任能力/2)事例の検討/検察官の主張/裁判所の判決/複雑酩酊という概念を否定する傾向/「原因において自由な行為」理論/3)過去の裁判例から/鑑定結果を採用しない完全責任能力判決/鑑定結果を採用しない限定責任能力判決/鑑定結果を採用した限定責任能力判決/4)酩酊概念を法律家と共有することの重要性 第8章 双極・型障害/コラム・市民のための精神医学講座(6)うつ病と躁うつ病/1)双極性障害と犯罪/2)事例/Eさん 女性 現住建造物等放火未遂事件被疑者 犯行時47歳/3)病前性格からの検討/4)睡眠との関係で/5)事件の契機と内容/6)精神科医療について 第9章 外国人に対する精神鑑定の諸問題/1)外国人の刑事裁判/外国人刑事裁判の実情/裁判を受ける権利/2)事例/Fさん 男性 覚せい剤取締法違反・強盗致傷等事件被告人 犯行時34歳/3)精神鑑定の手続き上の問題/4)鑑定医の問題/被鑑定人の母国の情報/通訳人から情報を得ることの是非/供述の信憑性の問題/5)心理検査の問題/精神鑑定のなかでの心理検査/外国人に対する心理検査/6)通訳を介する問題/過去の判決から/精神鑑定での通訳 7)法廷での問題 第10章 訴訟能力鑑定/1)訴訟能力鑑定とは/訴訟能力と裁判員裁判/2)事例/Gさん 男性 強制わいせつ事件被告人 犯行時29歳/3)裁判員裁判との関係で/高齢社会と訴訟能力/4)訴訟能力鑑定を行うにあたっての問題点 5)訴訟能力鑑定は何を鑑定するのか/訴訟能力を広くとらえる/訴訟能力を狭くとらえる/黙秘権について/訴訟能力を認めるには おわりに/索引

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