• 浅野 弘毅, 阿保 順子
  • 価格 1680円
  • 判型:A5判、144ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0529-1
  • ISBN 4-8265-0529-9
  • 初版発行年月 2010年07月
  • 発売日 2010年07月26日
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内容紹介文

高齢者が不遇をかこって孤独と妄想のなかで呻吟している社会の有り様は、「老い」を排除と「介護」の対象としてとらえ、「老い」の居場所が奪われていることを示している。寄る辺ない生を生きる高齢者の心的世界を精神医学的考察と臨床によって解読する。

高齢者が妄想を発するのは何故か。認知症と妄想病態の違いはどこにあり、両者はどのように関係しているのか。
総務省が2008年9月15日に発表した統計によると、日本における65歳以上の人口は推定2819万人であり、総人口に占める割合、いわゆる高齢化率は22%となっている。そのうち70歳以上の人口は2017万人であり、初めて2000万人の大台を超えた。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、2055年には日本の総人口は9000万人を割り込む一方で、65歳以上の人口は3646万となり、高齢化率は40%を超えることになると予想されている。
多くの高齢者は家族や故郷から離れ、配偶者と死別し、一人暮らしとなる。退職後は他者との関わり、社会との接点が極端に少なくなり、塞ぎ込む。かつて老人とは蓄積された経験と智識に敬意を払われるべき存在であったが、機械化・自動化・情報化が進んだ現代社会では、過去のものは捨て去られ忘れ去られる遺物でしかない。「現代においては「老い」は排除されるべきものとされ、「問題」として扱われ、介護の対象」となるだけの存在でしかないのである。居場所を無くし存在価値を奪われた高齢者が自己防衛として、意味ある物語を生み出そうとし、そこから高齢者の妄想が現れてくるのである。それを一言で表すならば「孤独」ということになるだろう。
高齢者の妄想をめぐる精神病理学的な議論を中心に、臨床とケア・看護の実例を示しつつ、認知機能障害の有無とは独立に、妄想のなかに生きざるをえない高齢者の実状にスポットをあてる。

目次

「老い」 の居場所(浅野弘毅)
作話と被害妄想――「意味の世界」を護る(大井玄)
花咲くをとめ達(星野征光)
「猫と私と、時々、団地」――デイケアからの報告(岩田明子)
高齢者が妄想を呈する時(高田知二)
一人暮らしの女性高齢者の幻覚妄想状態(粟田主一・櫻田久美)
妄想と高齢者、援助者との関係――認知症を中心に(小野寺敦志)
木陰で老い人の不思議な語りを聴く(西川勝)
高齢者の妄想――統合失調症と認知症の狭間で(浅野弘毅)
配偶者のいる孤独-――高齢者の嫉妬妄想(近藤等)
認知症高齢者と妄想――心理社会的病理に基づいた理解(高橋幸男)
虚構と現実が行き交う場所――認知症高齢者の人々が生きている時空(阿保順子)

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