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アイデンティティと学力に関する研究

  • 原田 琢也
  • 価格 2783円
  • 判型:A5判、160ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0473-7
  • ISBN 4-8265-0473-X
  • 初版発行年月 2007年11月
  • 発売日 2007年11月07日
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内容紹介文

学力に関する本質的で,根本的なこととは何か。それは学力が社会的に構成されるということである。社会的諸条件が子どもの自己概念を媒介にして学力に影響を及ぼしていくプロセスは,生徒や教師の無意識的な行為が,構造的に複雑に絡まり合うことによって生成されたものであるだけに,日頃人々にほとんど意識されることはない。しかし,「学力大合唱」の時代にあって,政策担当者や学校現場の教員はもとより,より多くの人が,この構造を意識しておかなければならない。
この30年ほどの間,同和地区を校区に含む学校では,同和地区生徒の学力・進路保障のために,昼夜を問わない精力的な取組が展開されてきた。学習センタでの夜間の補習,家庭訪問での個別指導など,ありとあらゆることを試してきた感がある。しかし,この20年間について言えば学力格差は横ばいのまま,決して縮小されてきたわけではない。そこには学力向上を妨げる,社会構造的な要因が介在している。同和地区生徒をはじめ社会的に厳しい状況に置かれている子どもたちが学力を獲得していくためには,この「社会の壁」を打破していかなければならない。教育政策が学校現場や子どもの状況を置き去りにしたまま,まるでそれらをもてあそぶかのように揺れ動く中,学校現場で生きる生身の人間の姿を描くことによって,教育政策のイデオロギー性をあぶり出し,本当の学力向上の道を模索する。

目次

はじめに
第1章 同和地区の子どもたちの学力をめぐる理論
1 同和地区の子どもたちの教育課題
2 再生産論(1)コールマン・レポート/(2)ウィリスの対抗文化的再生産論/(3)バーンステインの言語コード論/(4)ブルデューの文化的再生産論/(5)再生産論のまとめ
3 同和地区の子どもたちの学力問題に関する研究(1)不平等な機会構造/(2)下位文化論/(3)高知県の漁村部落のフィールド調査から/(4)再生産論から再創造論へ/(5)学力と自尊感情,そして地域の教育コミュニティへ/(6)家庭の教育条件と学力格差/(7)エフェクティヴ・スクール論(「効果のある学校」論)
4 本研究の枠組み(1)アイデンティティに注目する理由/(2)研究の方法/(3)用語の定義/(4)実践家のエスノグラフィーということ
第2章 学校文化とアイデンティティ
1 研究の出発点
2 ディシプリン権力装置としての学校(1)分析枠組/(2)規格化/(3)試験/(4)階層序列的な監視/(5)〈知〉との結びつき
3 再生産装置としての学校文化(1)ディシプリン権力とハビトゥス/(2)教師のハビトゥス/(3)教師の戦略/(4)教師のハビトゥスと支配的文化/(5)せめぎあい/(6)生徒の対教師戦略とグループ化/(7)校則違反の両義性/(8)学校文化と社会の不平等
第3章 アイデンティティ形成と学校の変化 ―明子のアイデンティティ形成過程を通して
1 ある夏の出来事
2 明子の葛藤(1)「学セン」をめぐって/(2)「学セン」のことを語れない背景 3 明子の生き方(1)葛藤を乗り越えて/(2)自分の周りから/(3)学級のみんなへ
4 アイデンティティ形成のダイナミクス
第4章 アイデンティティ形成と学校適応 ―健太のアイデンティティ形成過程を通して
1 健太の3年間を振り返って(1)タンラン・ボンタン・茶髪の入学式/(2)エスケープ/(3)校外学習で/(4)相談室での出来事/(5)3年になって
2 健太の変容の背後にあるもの(1)タンラン・ボンタン・茶髪の意味/(2)エスケープの理由/(3)文化祭での発表/(4)「ザイショ」との出会い/(5)「ザイショ」に対する思いの変化/(6)変容の契機
3 健太のアイデンティティ
おわりに
参考文献

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