『心のノート』研究

  • 柿沼 昌芳, 永野 恒雄
  • 価格 1890円
  • 判型:A5判、216ページ、並製
  • ISBN 978-4-8265-0376-1
  • ISBN 4-8265-0376-8
  • 初版発行年月 2003年07月
  • 発売日 2003年07月18日
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内容紹介文

心身の呪縛から、個の自立へ。
斎藤貴男による「なぜ、今『心のノート』なのか」を収録、モラルなき「教育改革」のモラルを問う!

『心のノート』は、子どもたちに〈自分で〉書き込ませながら、規範意識を内面化させる。河合隼雄によるユング心理学を応用した一種のマインド・コントロールである。教育基本法「改正」論は、その論拠に子どもたちの規範意識や道徳心の低下などモラルの崩壊を掲げる。『心のノート』導入と教育基本法「改正」は、表裏一体である。

 グローバリズムの猛威を背景に、競争、効率、サバイバル、自己責任という企業社会の論理が、今や、教育の世界にも侵入している。サバイバル競争と成績至上主義が、教育の場からモラルを喪失させようとしている。現場教師による『心のノート』の危険性についての緊急報告。

目次

まえがき

■第1部
〈対談〉なぜ、今『心のノート』なのか
斎藤貴男+柿沼昌芳+永野恒雄(司会)

三〇〇万の都民の意識/「心の東京革命」の危険性/管理されるものは管理する/不平等の拡大/教育改革と新自由主義/牙を抜かれる教師/ルールとマナー/保守主義的市民権論とハイパー資本主義/『心のノート』の背景/『心のノート』の限界/『心のノート』に抗する論理/きれいな言葉・きたない言葉

■第2部
『心のノート』を検証する

▲第1章 子どもの心と乖離する『心のノート』……石澤雅雄
子どもは「わるさ」もしながら大きくなる/『心のノート』は「しなやか」か?/子どもたちはけな気に生きている

▲ 第2章 学級の子どもと『心のノート』を付き合わせて考える……嘉納英明
階層分化と青少年の犯罪/ミノルとの出会い/現実の教育場面に『ノート』は応えているか/「よりそうこと、わかり合うことから」を考える/『ノート』のこれから

▲ 第3章 「きれいごと」がほんとうらしく見えるとき……尾崎光弘
冷笑をもって適当に/「きれいごと」では解決しない/子どもは、悪を生きる/子どもたちは、やさしくおとなしくなってきた/将来への安心材料としての子どもイメージ

▲ 第4章 喜ばれることの“わな”……橋本きよ子
役に立つようになれ/他の人に喜ばれたい/ボランティアに内在する矛盾/利用されるボランティア/子どもたちに……いのちの尊さを/たくさんの出会いの機会を

▲ 第5章 中学生は『心のノート』をどう捉えるか……徳永忠雄

▲ 第6章 親だって身体を張ってものを言っているのです……兼弘陽子
「謎のノート」/『心のノート』って誰?/「吸いすぎに注意しましょう」/集団生活は子どもに多くのことを刷り込んでいる

▲ 第7章 河合隼雄のマインド・コントロール「手法」……金子隆弘
文章上の特徴―カウンセリングの受容と共感の理論、父性・母性原理/非言語的なマインド・コントロール―教えたい「心」のイメージ化/〈空欄〉によるマインド・コントロール/心と形のドッキング―人間の内面(心)を支配していく仕掛け/心理的な手法による「愛国心」の形成/『心のノート』を乗り越えるために

■第3部 『心のノート』の背景

▲ 第8章 『心のノート』が登場した背景……金子隆弘
戦後道徳教育の歴史と『心のノート』/『心のノート』が登場した直接的な背景/『心のノート』の理論的背景―アメリカの人格・道徳教育/戦後形成された国民意識を時間をかけて大きく変えることが目的/学習指導要領道徳編と『心のノート』

▲ 第9章 河合隼雄の『心のノート』作成意図……金子隆弘
『心のノート』は「若き国民の義務」(二一世紀懇)/「神の国」発言と河合隼雄/河合隼雄と二一世紀版『期待される人間像』/河合隼雄氏が考える「新しい個人主義」という人間像/「民族意識を高める意図」は本当にない、といえるのか?/子どもは、国や大人の思惑にそって〈育てあげられる〉存在ではない

▲ 第10章 「モラル」を弄ぶ『心の東京革命』……柿沼昌芳
「叱られる権利」のみを強調/家庭教育に侵入する東京都/コンラッド・ローレンツの引用/体罰を肯定する都知事/教育委員会が推進する『心の東京革命』/「マナーからルールへ」

▲ 第11章 教育政策の動向と『心のノート』……青木茂雄
臨教審答申と新しい公共/「新しい荒れ」と「心の教育」/教育改革国民会議と「奉仕活動」/教育基本法改悪と『心のノート』

▲ 第12章 道徳教育は道徳を教えたのか……柿沼昌芳
道徳教育に関する世論/半世紀前の『道徳教育の手引き』/激しい講習会阻止闘争/道徳教育は憲法精神を理解し徹底する!/従属の道徳か、発展の道徳か

▲ 第13章 『国民の道徳』を斬る……青木茂雄
『新しい公民教科書』の「パイロット版」としての『国民の道徳』/何が「歴史」で、何が「国柄」か/即成の「象徴天皇制」論/《個人の尊厳》と《自由》と《道徳》/「国家」と「公共」/《国民の道徳》を総括する

▲ 終章 身体の支配から心の支配へ……永野恒雄
大津高校事件と世羅高校事件/儀式的行事と「国旗・国歌」/御真影と日の丸/身体を媒介とした心の支配/『声に出して読みたい日本語』/『心のノート』の背景/問われる教師の主体性

■資料編

あとがき

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